うつ病は労災と認められる?認定基準と請求の流れを弁護士・社労士が解説
- うつ病が労災と認められるためには、何が必要なの?
- うつ病の労災認定は難しい?
- うつ病で労災申請したり傷病手当金の請求をしたりする場合のデメリットは?
- うつ病の発症が会社の責任だと認めてもらう条件を知りたい!
こんな悩みを解決できる記事を書きました。
精神疾患に関する労災請求や、会社に対する損害賠償請求を積極的に取り扱っています。
この記事で解説する「うつ病は労災と認められる?認定基準と請求の流れを弁護士・社労士が解説」を読めば、誰でもうつ病で労災が認められるために必要な条件がわかるようになります!
まずは、「結論として、うつ病は労災と認められるの?」という疑問に回答しているので、ぜひ読んでみてくださいね。
うつ病は労災と認められる?
結論
結論として、うつ病は労災と認められる可能性があります。
うつ病(うつ病エピソード)は、ICD-10のF3「気分[感情]障害」の中に分類されています。そのため、うつ病は労災の対象となる「対象疾病」です。
「労災の対象となる診断名について詳しく知りたい」という方は、以下記事で確認してみてくださいね。
そもそも「うつ病」とは?
うつ病は、定期間にわたる気分の落ち込みや喜びの喪失、興味や喜びの低下などの症状が見られる状態を指します。
主な症状は、絶望的で憂うつな気分が2週間以上続く、体重の変化や食欲の変化、不眠または過眠、倦怠感や易疲労感、集中力の低下などがあげられます。
職場での過重労働やハラスメントなど、業務によるストレスが原因で発症することがあり、その場合は労災(業務上)と認定される可能性があります。
うつ病とは、悲しみを感じたり、活動に対する興味や喜びが減少したりする症状がその人の社会生活を困難にするほど強くなり、病気になった状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。
うつ病は、 不安に次いで多くみられる精神障害です。かかりつけ医を受診する人の約30%にうつ病の症状がみられますが、それらの人々のうち、実際にうつ病の人は10%未満です。
いったん起きたうつ病は、治療しないでいると典型的には6カ月ほど続き、ときに2年以上続く場合もあります。生涯に何回か再発する傾向があります。
うつ病- 10. 心の健康問題 – MSDマニュアル家庭版
うつ病の症状や原因
うつ病とは、脳内の神経伝達物質「セロトニン」「ノルアドレナリン」が減ってしまう病気だと考えられています。
診断ガイドラインによれば、うつ病(うつ病エピソード)(F32)について次のように記載されています。
典型的な抑うつのエピソード(中略)では、患者は、通常、抑うつ気分、興味と喜びの喪失、および活動性の減退による易疲労感の増大や活動性の減少に悩まされる。
わずかに頑張ったあとでも、ひどく疲労を感じることがふつうである。
他の一般的な症状には以下のものがある。
⒜ 集中力と注意力の減退
⒝ 自己評価と自信の低下
⒞ 罪責感と無価値観(軽症エピソードにもみられる)
⒟ 将来に対する希望のない悲観的な見方
⒠ 自傷あるいは自殺の観念や行為
⒡ 睡眠障害
⒢ 食欲不振
気分の落込みは日による変化が少なく、しばしば環境に対しても無反応であるが、しかし、日がたつにつれて特有な日内変動を示すことがある。
躁病エピソードと同じように、臨床像には明らかな個人差があり、特に思春期には非定型的な症状を示すことがふつうである。
症例によっては、時に不安、苦悩及び精神運動性の激越が抑うつ症状よりも優勢であったり、易刺激性、過度の飲酒、演技的行動、そして以前から存在していた恐怖症や強迫症状の増悪、あるいは心気症的とらわれなどの症状が加わることによって、気分の変化が隠されたりすることがある。
うつ病エピソードは、重症度の如何に関係なく、ふつう少なくとも2週間の持続が診断に必要とされるが、もし症状がきわめて重症で急激な発症であれば、より短い期間であってもかまわない。
「臨床記述と診療ガイドライン」
このような「身体性」症状の最も典型的な例は、普通は楽しいと感じる活動に喜びや興味を失うこと、朝の目覚めが普段より2時間以上早いこと、午前中に抑うつが強いこと、明らかな精神運動制止あるいは焦燥が客観的に認められること、明らかな食欲の減退、体重減少などがあげられます。
また、うつ病(うつ病エピソード)は、軽症、中等症、重症うつ病の3つに区別されます。
この区別は、現在の症状の数とタイプ及び重症度を含む複合的な臨床判断に基づいて判断されます。日常の社会的、職業的な活動の幅は、しばしばエピソードがどのくらいの重症度であるかを知るために有用な一般的指標となるとされてます(東京地判令和 2年10月27参照)。
うつ病で労災認定される基準
うつ病が労災と認められる要件
うつ病が労災(業務上)と認められるために必要な要件は、次のとおり3つあります。
- 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
- 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
- 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
そのため、この3つの要件を満たせば、うつ病が労災と認められることになります。
そして、うつ病であれば、労災の対象となる「対象疾病」であるため1つ目の要件を満たします。
発症原因が「業務によるストレス」であること
職場での過酷な労働環境や人間関係など、業務に内在する様々なストレス要因が、うつ病発症の原因となっていることが必要です。
業務と発症したストレスとの間に、明確で客観的な因果関係が認められないと、労災と認定されません。
残業時間が一般的な範囲内で業務上の特段の出来事もなかったり、職場の人間関係にもトラブルがなかったような場合であれば、業務によるストレスとはいえません。
また、発症の経緯が不明確だと、業務が原因かプライベートが原因か判断がつきにくくなります。
さらに、ストレスの大きさや感じ方は人それぞれですので、一部の人だけがうつ病を発症するような業務によるストレスの場合に労災であると認めることはできません。
そのうえ、うつ病を発症するほどの強度の精神的ストレスがあったことが必要です。
一時的なストレスでうつ病を発症しただけでは、労災と認められる可能性は低くなります。一定期間、強いストレス状態が継続していたことが認められる必要があります。
業務量が一時的に増えただけの場合や、上司とひとこと言い争いをしたくらいでは、精神的ストレスの強度が不十分と判断されることになります。
「どういう場合であれば、業務によるストレスで発症したと認めてもらえるの?」という方は、以下記事で詳しく解説していますので、確認してみてくださいね。
業務以外のストレスや個体側要因がないこと
家庭内のトラブルや経済的な問題、病気や介護などのプライベートの出来事が、うつ病発症の主因となっている場合は、業務とは無関係なストレスです。このような場合は労災と認められません。
発症前に業務以外の大きな環境変化があり、その影響が考えられるケースでは、労災認定が難しくなります。
また、うつ病の発症には、個人の資質や体質、病歴なども影響します。
うつ病や不安障害の既往歴があったり、幼少期からの人格的問題があるなど、個人的な要因や素因が大きい場合は、労災として認定されにくくなります。
「業務以外のストレスで発症したり、既往症がある場合はどのように判断されるの?」という方は、以下記事で詳しく解説していますので、確認してみてくださいね。
うつ病で労災申請をする方法
うつ病の労災申請の流れ
労災申請する際、あなたが休業している場合は、休業補償給付支給請求書(様式8号)を作成することになります。この書類の真ん中あたりに、会社の証明欄があります。
そのため、会社の人事労務担当者にうつ病で労災申請をすること、会社の証明をして欲しいことを伝えます。
会社に証明を求めたものの証明を断られた場合に備えて、書面で残しておくことが重要です。なお、会社に証明を断られた場合でも、その旨を記載すれば労災申請を行うことができます。
主治医に求められる証明
次に主治医に、労災申請に必要な医師の証明欄の記入を依頼します。
労働基準監督署への申請手続き
休業補償給付支給請求書(様式8号)を作成する場合、労災の申請は、管轄する労働基準監督署に直接申請する必要があります。
なお、休業補償給付支給請求書(様式第8号)ではなく、労基署から病院に対し直接治療費を支払うよう求める療養補償給付請求書(様式第5号)を使って労災の申請をするのではないかと思う方もいるかもしれません。
しかし、総合病院を除き、街にある精神科や心療内科クリックのほとんどすべては、労災保険指定医療機関として指定を受けていません。そのため、病院を経由して労災申請をすることができません。
そのため、多くの場合、療養補償給付請求書(様式第5号)を使用することはできません。
また、治療費に関する労災申請を行う場合、あなたは毎回治療費を病院に支払ったうえで、領収書とともに療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)を労基署に提出することになります。
このように、治療費に関する労災申請を先に行うと手間と費用がかかることから、私たちは休業補償給付の労災申請を優先させています。
また、私たちは、あなたの発症したうつ病が業務によるストレスが原因であるという証拠もそろえて、労働基準監督署に一緒に提出いたします。
うつ病で労災認定されない例
うつ病で労災認定が難しい場合として、次のような例があげられます。
精神的ストレスの強度が不十分な場合
うつ病を発症するほどの強度のストレスであったかが問題となります。
業務量が一時的に増えただけでは不十分で、一定期間継続した高いストレス状態であったことが必要です。上司とのひとこと言い争いや一時的な責任の増加などでは、強度が不十分とみなされます。
その一方で、ストレス反応に個人差があり、比較的軽度のストレスでもうつ病を発症する可能性はあるため、総合的に判断されます。
業務とストレスの関連性が不明確な場合
発症したストレスの原因が業務によるものなのか、プライベートな問題によるものなのか、経緯や因果関係が不明確だと労災と認められません。
残業時間が一般的な水準であったり、人間関係についてもトラブルの記録が特にない場合などは、業務が発症の原因であるとの立証が難しくなります。業務との関連を具体的に示す証拠がないと、業務との関連性は不明確と判断されがちです。
発症原因が業務外のストレスの場合
家庭内のトラブル(離婚、親の介護等)、経済的問題、身内の病気、自身の持病の悪化などのプライベートな出来事が主な発症原因だと考えられる場合は、労災とは認められません。
ただし、業務とプライベートの双方に原因があり、業務によるストレスが一定以上関与していれば、労災と認定される可能性もあります。
個人的な要因が大きかった場合
うつ病の発症には、個人の気質的な脆弱性や病的要因も影響を及ぼします。
うつ病や不安障害、パニック障害等の精神疾患の既往があれば、個体側要因があると判断されます。また、幼少期からの人格的問題や対人関係の問題など、本人に内在する心理的要因も影響します。
このような個人的要因が大きいと、業務起因性が希薄と判断され、労災認定が困難になります。一方、軽度の要因があっても、強い業務ストレスが主因であれば労災と認められる場合もあります。
請求手続に不備があった場合
申請書類の不備や、診断書の記載内容が不十分だと、労災請求が認められなくなる可能性があります。申請した書類や意見書、証拠などから業務とストレスの関連性や発症の経緯の記述が不明確だと、業務との関連性を認めがたくなります。
労働時間管理の資料に記録漏れがあれば、過重労働の立証ができません。また、労働者からの発症経緯の説明と、主治医や会社からの資料が符合していないと不利になります。
労災認定のためには、適切な手続と十分な証拠が重要です。
うつ病などの精神障害で労災認定されるのは難しい?
一般的には、うつ病などの精神障害で労災認定されるのは難しいと言われています。
精神障害の労災申請について、厚生労働省 令和5年度の統計によると労災と認められた全体の割合は34.2%です。
しかし、次のように、労災だと認められやすい業務ストレスと、労災だと認められづらい業務ストレスと大きく分かれます。
具体的な出来事(ストレスの原因) | 労災認定率 |
「特別な出来事」(※)があった | 100% |
業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした | 72.1% |
仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった | 37.7% |
1か月に80時間以上の時間外労働を行った | 57.4% |
2週間(12日)以上にわたって休日のない連続勤務を行った | 63.5% |
上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた | 54.3% |
同僚等から、暴行又はひどいいじめ・嫌がらせを受けた | 50.0% |
顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた ※いわゆるカスハラ(新設) | 62.7% |
セクシュアルハラスメントを受けた | 66.0% |
上司とのトラブルがあった ※労災認定が難しい例(参考) | 3.5% |
労災だと認められた全体の割合 | 34.2% |
このように、労災だと認められやすい業務ストレスであれば、労災だと認められる可能性は高くなります。
うつ病で労災の申請をするデメリット
発症したうつ病が労災であると認められた場合、傷病手当金よりも高額な休業補償給付(特別支給金を含む)を得ることができますし、会社に対する損害賠償請求も認められやすくなります。
そのため、基本的に労災申請をすることはメリットしかありません。
それでも、デメリットも考慮する必要があるため考えてみます。
処理手続きの長期化と精神的負担
申請から最終的な労災認定・不支給決定に至るまでには、時間がかかることが少なくありません。
また、請求を行っても、審査の過程で追加書類の提出を求められたり、事情聴取を受けたりする可能性もあります。このような長期化する手続に伴う精神的・肉体的負担があることは無視できません。
労災不支給の可能性とリスク
労災申請そのもののデメリットではありませんが、労災申請をしても不支給となってしまう可能性があります。
審査の結果、業務との関連性が認められなかったり、個人的要因が大きかったりすると、不支給処分を受けてしまう恐れがあります。
請求から長期間が経過した上で、結果が不支給と通知された場合、精神的に大きなダメージを受ける可能性があります。
雇用関係への影響と人間関係のトラブル
労災申請を行うと、会社との雇用関係に影響が及ぶリスクがあります。
会社側に申請に対する非協力的な対応があれば、トラブルに発展する恐れも生じます。また、人間関係のギクシャクした状況で申請を行えば、職場の人間関係がさらに悪化することも考えられます。
状況によっては、退職を余儀なくされるケースさえあり得ます。
ただし、会社による解雇や休職期間満了に伴う自然退職とさせられた場合、争うことができる場合があります。
本人の体調不良の長期化の可能性
自分で労災申請を行う場合、手続的なストレスや専門的な知識が必要であるのによくわからないことによって生じる負担が、かえってうつ病の症状を長期化させてしまう恐れもあります。
申請手続の長期化、経済的不安、人間関係への影響など、様々な要因が、本人のメンタルヘルスに追い打ちをかける可能性があります。
うつ病で傷病手当金はもらえない?
うつ病も傷病手当金の対象
うつ病になって休職する場合、傷病手当金は健康保険に1年以上加入している場合に受給できます。
傷病手当金は、医師が療養のために働けないと証明すれば、具体的な病名に関わらずうつ病や適応障害、睡眠障害などでも基本的に支給されます。
「傷病手当金についての詳しい説明が知りたい!」という方は、以下記事で詳しく解説していますので、確認してみてくださいね。
傷病手当金申請の注意点
退職後の傷病手当金の申請にはいくつか注意点があります。
- 精神科やメンタルクリニックの通院
退職後の傷病手当金を申請するためには、精神科やメンタルクリニックでの通院が必要です。通院頻度は原則的に1か月に1回以上が望ましいです。 - 退職日に出勤しないように注意
退職日に出勤しないように気をつけてください。退職日に出勤してしまうと、退職日に「出勤した」とされて退職後に傷病手当金を受け取れない可能性があります。 - 労務不能の証明
精神科やメンタルクリニックの医師が傷病手当金の書類に「労務不能」と証明してくれることが重要です。
退職後の傷病手当金
また、退職後の傷病手当金の申請については、会社は手続きをしてくれないので、退職前にどこに申請をすればいいか確認しておくことをお勧めします。
うつ病で傷病手当金の請求をした場合のデメリットは?
傷病手当金の概要
傷病手当金とは、業務外の病気やケガで休職や休業を余儀なくされた場合に、健康保険から支給される現金給付のことです。支給要件として、加入する健康保険の被保険者であり、一定期間以上の療養で就労できない状態にあること、一定の資格期間を満たしていることなどが求められます。
うつ病で傷病手当金の請求をして就労不能であるとみとめられた場合、定められた計算方法によって算出される傷病手当金を受け取ることができます。
具体的には、支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3×支給日数という計算式によって算出します。
また、労災申請をする場合でも、労基署による労災であるか否か判断には半年程度かかりますので、それまでの間の生活費を確保することは大切です。
そのため、基本的に傷病手当金の申請をすることはメリットしかありません。
それでも、デメリットも考慮する必要があるため念のため考えてみます。
傷病手当金の不支給リスク
うつ病で傷病手当金を請求しても、不支給処分を受ける場合があります。
請求の審査過程で、発症の原因が業務に内在するストレスであったことが明らかになれば、労災の対象となり健康保険の対象とはならないことから、傷病手当金の支給は認められません。その場合、結果的に、請求手続の負担を被ることになりかねません。
そのため、傷病手当金の申請をする際、業務ストレスが原因でうつ病を発症したとか、会社の責任でうつ病を発症したといった内容で申請して良いことは一つもありませんから、絶対に辞めるべきです。
労災かどうかの判断は、傷病手当金の申請時ではなく、労基署に対して労災請求を行うことによって判断を求めるべきです。
「傷病手当金の申請をする際、どういうことに気を付ければ良いの?」という方は、以下記事で詳しく解説していますので、確認してみてくださいね。
既往症の開示による就職・転職への影響
傷病手当金の請求を行えば、うつ病の既往歴を健康保険の保険者に開示する必要があります。その情報が外部に漏れた場合、就職や転職の際に障害となり、精神的不安定と判断されて不採用となるリスクがあります。中小企業ではそのリスクが特に高くなります。
しかし、そもそも傷病手当金の申請をする場合、会社を休んでいる状態(休職)であることが原則ですから、会社を休まなければならないような体調であることを会社側は把握しています。
そのため、傷病手当金の申請をしたことによる特有のリスクというものではありません。
長期休職による職場復帰の困難さ
うつ病では症状が長期に及ぶケースも少なくありません。そうした長期休職となれば、休職前の業務や職場環境に適応できず、円滑な職場復帰が難しくなる可能性があります。
休職前の職場と同等の復帰ができない事態に陥れば、異動や職種転換を検討せざるを得なくなる場合もあり得ます。
しかし、これは傷病手当金を申請したことによるリスクというよりも、うつ病を発症したこと自体によるリスクであるため傷病手当金を申請するデメリットにはなりません。
申請手続の負担と長期化
傷病手当金の請求手続き自体に、一定の負担と時間を要します。病歴を詳細に記載する必要があり、診断書の作成など書類の準備にも手間がかかります。
さらに請求が却下された場合、審査請求などを行えば手続は長期化し、肉体的・精神的な負担が大きくなることが想定されます。
しかし、そもそも休職中は無給であるとする会社が圧倒的多数(もちろん無給とすることは適法です)であるため、傷病手当金を請求しなければ生活費の確保すら困難となりますので請求しないという選択肢はありません。
また、精神障害における労災の認定と異なり、傷病手当金の審査は比較的短期間で終了します。
うつ病の発症が会社の責任だと認められるためには
労災認定された場合
業務ストレスが原因でうつ病を発症したとして、労災認定がされた場合、休業補償給付を受けることができます。
傷病手当金は最大でも1年6か月分までしか認められないのに対し、休業補償給付ではそういった時間的な制限はありません。
また、金額についても、傷病手当金は概ね6割が支給されるのに対し、休業補償給付では特別支給金も合わせて概ね8割の金額を得ることができます。
さらに、労災認定された場合、症状固定後に後遺障害が認められれば、さらに障害補償給付としてまとまったお金を得ることができます。
労災認定された=会社の責任?
勘違いされやすい問題として、労災認定された=会社の責任であると考える方がいます。しかし、これは誤りです。
もちろん、特に長時間労働を原因として労災認定された場合は、会社の責任であると認められる可能性は高まります。
しかし、労災かどうかという基準と、会社の責任が認められるかという基準は全く別のものであるため、両者は関連はしていますが別々に判断されます。
その結果、労災であると認められても、会社の責任が認められないという場合もあります。
「どういった場合であれば、会社の責任と認められるの?」という方は、以下記事で詳しく解説していますので、確認してみてくださいね。
会社に責任が認められた場合
損害賠償請求ができる
会社に責任が認められた場合、会社に対して損害賠償請求をすることができます。
損害賠償請求は、労災保険で足りない金額を請求することになります。例えば、慰謝料については労災保険からは一切支給されませんので、会社に対して請求することになります。
もらえる金額が増える
このように、労災から支給を受けることができるほか、会社からも損害賠償を受けることができます。
そのため、事案によっては、トータルで3000万円や4000万円といった金額を受け取ることができる場合もあります。
しかしそのためには、労災申請と会社に対する損害賠償請求の両方について、高度に医学的な判断と法的な知識が必要になります。
「うつ病の発症が会社の責任だと認められた場合、どのくらいの金額がもらえるの?」という方は、以下記事で詳しく解説していますので、確認してみてくださいね。
うつ病が労災と認められるために必要なものを理解して手続を進めよう!
ご紹介した「うつ病は労災と認められる?認定基準と請求の流れを弁護士・社労士が解説」を読めば、誰でもうつ病で労災が認められるために必要な条件がわかるようになります!!
最後に、ご紹介した内容をおさらいしておきましょう。
うつ病で労災と認められるために必要なことをまとめると、次のようになります!
- うつ病は、労災の対象となる「対象疾病」です。
- うつ病が労災と認められるためには、発症原因が「業務によるストレス」であることが前提です。
- また、発症原因が「業務によるストレス」というためには、業務以外のストレスや個体側要因によって発症したものではないことが前提となります。
- うつ病で労災認定されることは、特別難しいものではありません。実際に、うつ病でも多くの事例で労災の認定がされています。
- うつ病で労災の申請をするデメリットは、特にありません。ただし、労災認定の基準を正確に理解し適切な証拠を集めることが不可欠です。
- うつ病でも傷病手当金はもらえます。傷病手当金の請求をした場合のデメリットもありません。ただし、申請時に業務ストレスが原因であるといったような記載をしないこと、退職時に出勤しないことなどの注意点があります。
- うつ病の発症が会社の責任だと認められるためには、会社に安全配慮義務違反や不法行為責任が認められることが必要です。労災と認められる=会社の責任というわけではありません。
ご紹介した内容を理解すれば、あなたのケースにおいて、うつ病が労災と認められるかどうかわかるようになります!
「自分の精神障害が労災になるか知りたい!」、「会社に対して損害賠償請求したい!」という方は、別の記事の解説もチェックしてみてくださいね!
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