業務以外のストレスや治療中の精神障害がある場合の労災認定基準を解説!

この記事で解決できるお悩み
  • 業務以外で心理的負荷(ストレス)がある場合にも労災の認定されるの?
  • 既往や現在治療中の精神障害がある場合でも労災の認定はされるの?
  • 業務以外で心理的負荷(ストレス)があったり、治療中の精神障害がある場合の労基署の認定基準を知りたい!
弁護士・社労士 小瀬弘典

こんな悩みを解決できる記事を書きました。

精神疾患に関する労災申請や、会社に対する損害賠償請求を積極的に取り扱っています。

この記事で解説する「業務以外のストレスや治療中の精神障害がある場合の労災認定基準とは?」を読めば、誰でも、業務以外のストレスや既往症があった場合に自分が労災の対象になるかどうかわかるようになります!

まずは、「結論として、どうしたら業務以外のストレスや治療中の精神障害がある場合にも労災と認められるの?」という疑問に回答しているので、ぜひ読んでみてくださいね。

目次

精神障害の発病が「仕事が原因ではない」とされる場合

キーワードは「業務以外の心理的負荷(ストレス)」と「個体側要因(本人の要因)」

うつ病などの精神障害が労災であると認められるために必要な3つ目の要件は、「業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと」が必要です。

この「精神障害で労災が認められるための3つの条件」については以下の記事で詳しく説明していますので、「どんな条件があれば労災と認められるのか知りたい!」という方は、ぜひチェックしてみてください!

反対に言えば、業務以外の心理的負荷(ストレス)により精神障害を発病した場合や、個体側要因(本人の要因)によって精神障害を発病したことが明らかな場合には、労災であると認められないことになります。

もっとも、労災の請求がされた事案で、業務以外の心理的負荷(ストレス)個体側要因(本人の要因)によって精神障害が発病したとされたケースはほとんどありません

心理的負荷(ストレス)・個体側要因(個人の要因)と精神障害の発病との関係については、次の図のようにとらえられています。

「精神障害の労災認定」1ページ

労基署による調査の方法

労基署には、労災であるかどうかの審査のスピードをあげて、本人の負担を減らすことが求められます。

そこで、業務以外の心理的負荷(ストレス)個体側要因(本人の要因)についての労基署の調査は、簡略に行うこととされています。

具体的には、業務以外の心理的負荷(ストレス)や個体側要因(本人の要因)の調査は、基本的に申立書などの文書の提出を本人や家族に求めることによって行われます。

また、この文書による調査や、主治医から提出される医学的な証拠から、業務以外の心理的負荷(ストレス)や個体側要因(本人の要因)に関する確かな事情が認められた場合に限って、詳細について確認するという調査方法が採用されています。

労基署が行う調査には限界があることから、このような調査方法がとられています。

ただし、労基署が行った調査によって確かな事情が確認できなかった場合でも、「業務以外の心理的負荷(ストレス)」や「個体側要因(本人の要因)」なかったと確定することは適当でないことから、そういった事情が「ない」とされるのではなく、「確認できなかった」として結論が出されることになります。

まとめると、次の2つの場合は、精神障害の労災が認められることになります。

  • 業務以外の心理的負荷及び個体側要因が確認できない場合
  • 業務以外の心理的負荷又は個体側要因は認められるものの、業務以外の心理的負荷又は個体側要因によって発病したことが医学的に明らかであると判断できない場合

業務以外の心理的負荷(ストレス)がある場合

業務以外の心理的負荷(ストレス)とは

業務以外の心理的負荷(ストレス)がある場合、精神障害の発病が業務による心理的負荷(ストレス)が原因であるのか、業務以外の心理的負荷(ストレス)が原因であるのかを、区別しなければなりません。

そこで、業務以外の心理的負荷(ストレス)についても、そのストレスの大きさを評価することで、仕事が原因なのか、業務以外が原因なのかを区別することになります。

具体的には、以下の画像で示す「業務以外の心理的負荷評価表」に書かれているとおり、業務以外の「出来事」による平均的な心理的負荷(ストレス)の強さ(強い方から「Ⅲ」「Ⅱ」「Ⅰ」の3段階)を分類しています。

これを指標として、それぞれの「出来事」の心理的負荷(ストレス)の強さを評価し、労災かどうかを判断しています。

「精神障害の労災認定」9ページ

労基署による判断基準

具体的には、次のような場合は労災であると認められないことになります。

  • 「Ⅲ」に当たる業務以外の「出来事」のうち、心理的負荷(ストレス)が極めて強いものがある場合
  • 「Ⅲ」に当たる業務以外の「出来事」が複数ある場合などで、業務以外の心理的負荷によって発病したことが医学的にみて明らかな場合

そのため、労基署は、心理的負荷(ストレス)の強さが「Ⅲ」と評価される出来事の存在することが明らかであれば、その具体的な出来事の内容などを詳細に調査し、その出来事が発病の原因であると判断することについて医学的な観点から慎重に検討するものとされています。

心理的負荷(ストレス)の強さが「Ⅲ」とされてるのは、次のものです。

出来事の類型具体的出来事
①自分の出来事・離婚又は配偶者と別居した
・自分が重い病気やケガをした又は流産した
②自分以外の家族・親族の出来事・配偶者、子供、親又は兄弟姉妹が死亡した
・配偶者や子供が重い病気やケガをした
・親類の誰かで世間的にまずいことをした人が出た
③金銭関係・多額の財産を損失した又は突然大きな支出があった
④事件、事故、災害の体験・天災や火災などにあった又は犯罪に巻き込まれた
⑤住環境の変化該当なし
⑥他人との人間関係該当なし

なお、心理的負荷(ストレス)が強いとは判断されない業務以外の出来事(「Ⅱ」や「Ⅰ」の出来事)については、労災かどうかの判断に当たって、特に考慮する必要はないとされています。

「精神障害の労災認定」10ページ

既往歴や現在治療中の精神障害がある場合

個体側要因(本人の要因)とは

精神障害を発病した場合でも、なかには既往歴として過去に精神障害をわずらっていた方や、アルコール依存症などの既往の症状がある方がいます。

その場合、仕事が原因で精神障害を発病(悪化)したのか、既往歴・既往症などが原因で精神障害を発病したのかを、区別しなければなりません。

そこで、どのようなことが原因となって精神障害を発病したのかについては、医学的に判断するものとされています。

まず、個体側要因(本人の要因)とは、「個人に内在している脆弱性(ぜいじゃくせい)・反応性」のことを指します。

人はそれぞれ、精神障害を発病するまでに、生まれながらに存在していた要因や、幼いころから大人になるまでの成長の過程における学習、人と人との関係の中で得られた個人の特性は、違うものです。

このように、人それぞれの要因によって、個人のストレスに対する耐性の程度が異なるため、個体側要因(脆弱性・反応性)の程度も違うものになります。

特に、既往歴として過去に精神障害をわずらっていた場合や、労災の請求による精神障害の発病(悪化)よりも前から何らかの精神障害をわずらっていた場合は、カルテなどの医療記録によって、その人の生活歴などとして個体側要因を示す情報が記載されていることがあります。

つまり、幼いころから生まれながらに発達障害が疑われるような記載がされていたり、個人の気分の不安定さや衝動性などが記載されていることがあります。このような場合、個体側要因があるものとして注意が必要です。

さらに、医療記録の中に心理テストの結果が記載されている場合は、個人のストレスに対する心の動きや、それにより精神の不安定さや動揺などについての個体側要因の脆弱性(ぜいじゃくせい)を示す情報が記載されていることも少なくありません。

そのうえ、薬物依存症やアルコール依存症などをわずらっており、その依存の状況・程度がひどい場合、個体側要因(脆弱性)が高まっていると考えられます。

労基署による判断基準

具体的には、重度のアルコール依存状況がある等の顕著な個体側要因(本人の要因)がある場合に、個体側要因(本人の要因)によって精神障害を発病したことが、医学的にみて明らかであるときに限って、労災とは認められないことになります。

どのような場合が「個体側要因によって発病したことが医学的にみて明らかである」であるのかについては、一律に判断することは難しく、医学的な観点からに慎重に検討されるとされています。

そのため、労基署では、既往の精神障害や現在治療中の精神障害、アルコール依存状況等の存在が明らかな場合、まずその内容などを調査します。

そして、調査した内容が顕著なものであるときには、個体側要因(本人の要因)によって精神障害を発病したかどうか医学的観点から慎重に検討するされることになります。

精神障害の労災認定9ページ

労災と認定されるか不安でもしっかり理解して手続を進めよう!

ご紹介した「業務以外のストレスや治療中の精神障害がある場合の労災認定基準とは?」を読めば、業務以外のストレスや既往症があった場合に自分が労災の対象になるかどうかわかるようになります!

最後に、ご紹介した内容をおさらいしておきましょう。

  • 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病した場合には労災と認められません
  • 業務以外の心理的負荷及び個体側要因が確認できない場合だけでなく、医学的に明らかであると判断できない場合にも労災と認められます
  • 業務以外の心理的負荷(ストレス)の強さが「Ⅲ」となる「出来事」がある場合は注意が必要です
  • 既往の精神障害や現在治療中の精神障害、アルコール依存などの個体側要因(本人の要因)がある場合は注意が必要です

ここまでを図でまとめると、次のようになります。

「精神障害の労災認定」10ページ

ご紹介した内容を理解すれば、誰でも業務以外のストレスや既往症があった場合に自分が労災の対象になるかどうか判断できるようになります。

「自分の精神障害が労災になるか知りたい!」、「会社に対して損害賠償請求したい!」という方は、別の記事の解説もチェックしてみてくださいね!

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この記事を書いた人

小瀬 弘典のアバター 小瀬 弘典 弁護士 ・社労士

弁護士・社会保険労務士の小瀬 弘典(オセ ヒロノリ)です。

2011年に弁護士登録してから、年間300件以上の法律相談と紛争解決業務に携わってきました。

他の弁護士と違うのは、社会保険労務士の資格を持ち、「うつ病」などの精神障害の労災・損害賠償請求について独自のスキルと経験を身につけている点です。

これまでに多くの結果を出してきた手法やノウハウを、惜しみなく提供していきます。

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