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精神障害で労災と認定される条件は?基準となる3つの要件を徹底解説!

この記事で解決できるお悩み
  • 精神障害で労災が認められるためには、何が必要なの?
  • 精神障害の労災認定基準はどうなっているの?
  • 労災が認定がされるための条件を知りたい!
弁護士・社労士 小瀬弘典

こんな悩みを解決できる記事を書きました。

精神疾患に関する労災申請や、会社に対する損害賠償請求を積極的に取り扱っています。

この記事で解説する「精神障害で労災が認められる条件とは」を読めば、誰でも精神障害で労災が認められるために何が必要なのかわかるようになります!

まずは、「結論として、精神障害で労災が認められるためには、どんな条件があるの?」という疑問に回答しているので、ぜひ読んでみてくださいね。

目次

精神障害が労災と認められるために必要な3つの条件

法学の用語で「要件」とは、一定の法律効果を生じるため要求される事実のことを言います。

そのため、精神障害で労災が認められるための条件とは、この「要件」が何かという形で問題になります。

結論として、精神障害で労災が認められるためは、次の3つの要件のすべてを満たすことが必要です。

3つの要件

  1. 対象疾病を発病していること
  2. 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
  3. 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと

ただ、これだけではそれぞれどのようなことを示しているのか、よくわかりませんよね。そこで、このあと詳しく説明していきます。

精神障害の労災認定2ページ

対象疾病を発病していること

対象疾病とは

「対象疾病」とは、主としてICD-10のF2からF4に分類される精神障害のことを言います。

「対象疾病」については以下の記事で詳しく説明していますので、「対象疾病について詳しく知りたい!」「自分の診断名が労災の対象となるか知りたい!」という方は、ぜひチェックしてみてください!

当然のこととして、労災の対象となる精神障害である「対象疾病」を発病していることが1つ目の要件です。

現在、病院に受診・通院している場合は、診断名・発病時期などの診断根拠について主治医に確認をすることになります。

受診歴がない場合

もっとも、病院の受診歴がないまま自殺してしまった場合は、診断名や発病時期について医師に確認をすることができません。

その場合、家族や会社関係者から事情を聴取し、当時の言動や服装の変化などを把握して、発病の有無や発病の時期を判断することになります。そうすることによって、労災かどうかを判断します。

労災の認定基準に関する通達でも、次のように定められています。

自殺に精神障害が関与している場合が多いことを踏まえ、治療歴がない自殺事案については、うつ病エピソードのように症状に周囲が気づきにくい精神障害もあることに留意しつつ関係者からの聴取内容等を医学的に慎重に検討し、診断ガイドラインに示す診断基準を満たす事実が認められる場合又は種々の状況から診断基準を満たすと医学的に推定される場合には、当該疾患名の精神障害が発病したものとして取り扱う。

心理的負荷による精神障害の認定基準について」(令和5年9月1日基発0901第2号)

発病の有無や発病の時期は重要!

発病の有無と発病の時期については、2つ目の要件に関連する「業務による強い心理的負荷」(ストレス)との関係で非常に重要な事項です。

そのため、「発病の有無」について、仮に診断基準を満たすかどうか特定が難しい場合でも、種々の状況から診断基準を満たすと医学的に推定される場合には、対象疾病の精神障害が発病したものとして取り扱われます。

また、「発病の時期」について特定が難しい場合でも、心理的負荷となる「出来事」との関係や、自殺事案については自殺日との関係等を踏まえ、できる限り時期の範囲を絞り込んだ医学意見を求めて判断されることになります。

業務による強い心理的負荷が認められること

心理的負荷の総合評価が「強」であること!

認定要件の2つ目は、「対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること」とされています。

そのため、原則として、発病前おおむね6か月以内の期間における、業務による心理的負荷(ストレス)が認められるかを判断することになります。

そして、「業務による強い心理的負荷」(ストレス)が客観的に認められて総合評価が「強」となった場合に限り、業務上の疾病として取り扱われることになります。

心理的負荷の評価方法

心理的負荷の評価は、発病前おおむね6か月の間に、どのような「出来事」(例:長時間労働、パワハラなど)があり、また、その後の状況がどのようなものであったのかを具体的に検討して、心理的負荷の強さを判断することになります。

そして、心理的負荷の評価については、あなたが、その出来事や状況を主観的にどう受け止めたかによって評価されるものではないことに注意が必要です。

あなたが主観的にどのように感じたかではなく、同種の労働者が一般的にその出来事や状況をどう受け止めるかという観点から評価されることになります。

そして、「同種の労働者」とは、あなたと職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が同じような者の場合を想定して、心理的負荷の強さが評価されることになります。

労災の認定基準に関する通達でも、次のように定められています。

精神障害を発病した労働者が、その出来事及び出来事後の状況を主観的にどう受け止めたかによって評価するのではなく、同じ事態に遭遇した場合、同種の労働者が一般的にその出来事及び出来事後の状況をどう受け止めるかという観点から評価する。

心理的負荷による精神障害の認定基準について」(令和5年9月1日基発0901第2号)

心理的負荷の強さは、同種の労働者の視点から判断される!

このように、具体的な出来事について、あなたがどのように感じたかという主観的な視点から判断されるのではなく、同種の労働者であればどのように感じるかという客観的な視点から判断されるのには理由があります。

なぜなら、労働者の職種や経験等は様々なので、ある出来事が労働者に与える心理的負荷の程度を一律に定めるのは無理があるからです。

そこで、いったんは出来事ごとに平均的な心理的負荷(ストレス)の強度を設定した上で、さらにその心理的負荷の強度を個別の事案に応じた労働者の属性に基づいて修正する方法を採用することで、公平な評価がされることになります。

そのため、例えば、新規に採用され、会社で行っていた仕事について何も経験がなかった労働者が精神障害を発病した場合、経験豊富な熟練の労働者ではなく、業務経験のない新規採用者を想定して心理的負荷の強度を評価することになります。

6か月よりも前の出来事が考慮される場合

説明したように、業務による心理的負荷(ストレス)の評価期間は「発病前おおむね6か月」であるとされています。

心理的負荷の評価が「6か月」に制限されている理由は、医学的に「多くの研究が、疾病はきっかけとなる出来事から3-6か月以内に発病すると報告」されていることや、6か月を超えると個人の記憶の精度が大きく低下するとされているからです。

近年の医学的知見においても「多くの研究が、疾病はきっかけとなる出来事から3-6か月以内に発病すると報告していた」と整理されている

精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書

しかし、具体的な「出来事」の中には、ハラスメントやいじめのように繰り返されるものがあります。

このように、繰り返される出来事について、心理的負荷が強いかどうかを判断する期間を6か月に限定してしまうと、それよりも長い期間続く出来事を正しく評価することができません。

そのため、繰り返される出来事を一体のものとして評価することが必要です。

したがって、発病の6か月よりも前にハラスメントやいじめが開始されている場合でも、発病前おおむね6か月の期間にもそれが続いているときは、開始時からのすべての行為が心理的負荷の評価の対象とされます。

業務以外の出来事で発病したものでないこと

認定要件の3つ目は、「業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと」が必要です。

そのため、業務以外の心理的負荷(ストレス)や個体側要因による発病であることが明らかな場合は、精神障害の発病が労災であると認められないことになります。

業務以外の心理的負荷があった場合

業務以外の心理的負荷(ストレス)の評価については、まず対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務以外に心理的負荷がある出来事(例えば「離婚した」、「親族が死亡した」など)があったかどうかを確認します。

そこで、業務以外の出来事があった場合には、その出来事による心理的負荷の強度を評価します(強い方から「Ⅲ」「Ⅱ」「Ⅰ」の3段階)。

業務以外の出来事による心理的負荷の強度が「Ⅲ」であった場合などで、「業務以外の心理的負荷によって発病したことが医学的にみて明らか」であるときは、精神障害の発病が労災とは認められないことになります。

個体側要因があった場合

個体側要因とは、「個人に内在している脆弱性(ぜいじゃくせい)・反応性」のことを指します。

そのため、既往の精神障害や現在治療中の精神障害、アルコール依存状況等の存在が明らかな場合に、その内容を調査することとされています。

そして、顕著な個体側要因がある場合で、「個体側要因によって発病したことが医学的にみて明らかである」ときは、精神障害の発病が労災とは認められないことになります。

「業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと」に関する詳しい解説は、以下の記事でしています。

これまでの流れをまとめると、次のようなフローチャートで示すことができます。

「精神障害の労災認定」10ページ

労災が認められる条件を理解して手続を進めよう!

ご紹介した精神障害で労災が認められる条件とはを読めば、精神障害で労災が認められるために何が必要なのかわかるようになります!

最後に、ご紹介した内容をおさらいしておきましょう。

精神障害で労災が認められるための条件とは、次の3つの要件すべてを満たす場合です!

  1. 対象疾病を発病していること
  2. 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
  3. 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと

ご紹介した内容を理解すれば、精神障害で労災が認められるために何が必要なのかわかるようになります!

「自分の精神障害が労災になるか知りたい!」、「会社に対して損害賠償請求したい!」という方は、別の記事の解説もチェックしてみてくださいね!

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この記事を書いた人

小瀬 弘典のアバター 小瀬 弘典 弁護士 ・社労士

弁護士・社会保険労務士の小瀬 弘典(オセ ヒロノリ)です。

2011年に弁護士登録してから、年間300件以上の法律相談と紛争解決業務に携わってきました。

他の弁護士と違うのは、社会保険労務士の資格を持ち、「うつ病」などの精神障害の労災・損害賠償請求について独自のスキルと経験を身につけている点です。

これまでに多くの結果を出してきた手法やノウハウを、惜しみなく提供していきます。

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