精神障害と仕事との関係は?労災基準の考え方をご紹介!
- 精神障害が発病する原因って何?
- そもそも業務災害ってどういうこと?
- どうやって心理的負荷を評価する基準ができたか知りたい!
こんな悩みを解決できる記事を書きました。
精神疾患に関する労災申請や、会社に対する損害賠償請求を積極的に取り扱っています。
この記事で解説する「精神障害が労災となるための基本的な考え方」を読めば、精神障害が労災となる理由や、評価する基準がどのようにしてできたのか理解できるようになります!
まずは、「結論として、どうして精神障害が労災となるの?」という疑問に回答しているので、ぜひ読んでみてくださいね。
精神障害の原因
結論として、精神障害が労災となるのは、「ストレス-脆弱性理論」に基づき業務による強い心理的負荷が認められる場合があるからです。
そこで、このあと詳しく説明しますね。
「ストレスー脆弱性理論(ぜいじゃくせいりろん)」とは
精神障害は、一つの原因だけによって発病するものではないとされています。つまり、程度の差はあっても、「環境による原因」と「個体側の原因」(本人の要因)が組み合わされて発病するものと考えられています。
このことを前提に、精神障害の労災認定の基準は、「ストレス-脆弱性理論」に基づいて定められています。
「ストレス-脆弱性理論」とは、環境を原因とする心理的負荷(ストレス)と、個体側の原因(脆弱性)との関係で精神的な精神障害を発病するかどうかが決まるとする考え方です。
「ストレス-脆弱性理論」を図で示すと下の画像のようになります。
Aタイプは、心理的負荷(ストレス)が大きいことを原因として精神障害を発病したタイプです。
Bタイプは、脆弱性(本人の要因)が大きいことを原因として精神障害を発病したタイプです。
心理的負荷(ストレス)が強ければ、個体側の原因(本人の要因)が小さくても精神障害を発病します。
他方、脆弱性(本人の要因)が大きければ、心理的負荷(ストレス)が小さくても精神障害を発病します。
この場合のストレス強度は、環境によるストレスを、多くの人々が一般的にどう受け止めるかという客観的な評価に基づいて判断されます。労働者が、どのように感じたかという主観的に評価されるものではありません。
これは、精神医学上の最も有力な考え方であり、また、裁判例においても認められている考え方です。
精神障害、特に気分障害の発病は、個人の性格要因、疾患発現に対する遺伝的脆弱性要因、セロトニン、ノルアドレナリンなどの脳内アミン減少等の脳神経科学的要因、発病前に受けた心理社会的因子としてのストレス因の相互関係によるとされ、遺伝素因が強い場合には状況要因(心理社会的要因ストレス)の強弱にかかわらずうつ病は発病する。
「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」(令和5年7月)
精神障害が労災の対象となる理由
労災(業務災害)が、労災保険によって補償されるのは、「業務に内在し、又は通常随伴する危険の現実化と評価される」場合です。
そのため、精神障害であっても、「業務に内在し、又は通常随伴する危険の現実化と評価される」場合には、労災の認定をうけられることになります。
具体的には、①精神障害の発病の有無、発病の時期、疾患名については医学的な判断が必要です。
②また、業務による心理的負荷(ストレス)の有無、程度を客観的に判断することが必要となります。
③最後に、業務以外の心理的負荷(ストレス)や個体側要因についても確認する必要があります。
これらを確認した結果、次の3つがすべて認められれば「労災」と認められます
- 精神障害が発病したこと
- 評価期間において業務による強い心理的負荷(ストレス)が認められること
- 業務以外の心理的負荷(ストレス)や個体側要因により発病したとは認められない
反対に、次の3つの場合は「労災」と認めれらません
- 精神障害が発病していない場合
- 業務による強い心理的負荷(ストレス)が認められない場合
- 明らかに業務以外の心理的負荷(ストレス)や個体側要因によって発病したと認められる場合
この「精神障害で労災が認められるための3つの条件」については以下の記事で詳しく説明していますので、「どんな条件があれば労災と認められるのか知りたい!」という方は、ぜひチェックしてみてください!
仕事におけるストレスのモデル
心理社会的ストレス
ストレスと精神障害の発病との関係については、次のように考えられています。
人はストレス要因に直面すると、それまでの経験、自分の能力、価値観などをもとに、ストレス要因の強さや解決の困難性などを判断します。
その結果として、不安、うつ状態、睡眠障害、自律神経症状などのストレス反応を起こします。
そのため、性別、年齢、教育、生活習慣、性格などによって、ストレス反応は人によって違うものとなります。
これらのストレス反応が強くなることで、精神障害が発病すると考えられます。
そして、精神障害などのストレスによる疾病は、良い生活習慣や上手なストレス対処、家族や上司の支援によって、症状の軽減や回復ができるものと考えられています。
業務によるストレスのモデル
職業性ストレスのモデルには、いくつかの考え方があります。
例えば、仕事の量や責任が高く、自由度が低く、社会的サポートが少ない場合にストレス反応が高まるという研究があります。
また、仕事の要求や責任に比べて、心理的・経済的な報酬が少なく、仕事に注力する場合に最もストレスフルな状態になると考えられています。
その他、職場での役割のあいまいさ、上司・同僚・部下との関係における人間関係、作業の負担などをストレス要因と捉え、職場の上司・同僚・部下や家族、友人などによる精神的なサポートをストレスが緩和される要因として考えるモデルもあります。
心理的負荷(ストレス)は客観的に評価されます!
ストレスに対する強さは個人によって違います
ストレスがどの程度の強さであるかは、個人によってストレスとされる状況をどのように認識するかによって違います。
また、ストレスに対する強さや、精神障害の発病についても、人によって違うものです。
何をストレスと感じるか、感じないか。何をストレスとして強く感じるか、弱く感じるか。これらは、そのストレスの受け手の問題であると考えられます。
そのため、ストレスとその反応については、次のように説明されています。
- 個人によって、ストレスに対する反応は異なります
- ストレスに対する強度は、状況とともにストレス状況をどのように認識するかによって決まります
- ストレス反応の程度は、個人の対応能力によって異なります
客観的な基準によって判断することが必要!
ある人が、ストレスをがどのように受け止めるかは、その人がどう感じるかという主観的な問題です。
そして、主観的な問題である以上、人によって違うものとなります。
しかし、労災認定の判断にあたっては、人によって違うものではなく、客観的な評価がされなければなりません。
また、仕事だけでなく、日常生活のすべての場面で、ストレスは存在します。
ところが、仕事に関連する出来事であっても、日常的に経験するものであっても、弱い心理的負荷(ストレス)にしかならないものもあります。
そのため、精神障害が労災として認められるかどうかを判断する際に、個人が受けるすべてのストレスを評価することは不可能です。
また、弱い心理的負荷(ストレス)であったにもかかわらず精神障害が発病した場合は、ストレスが直接的な原因ではなく、その個人の要因によるものであると考えられます。
このように、ストレスに対する評価は、個人がある出来事を主観的にどう受け止めたかではなく、その出来事の心理的負荷(ストレス)を客観的な基準によって評価することが必要なのです。
まとめ
ご紹介した「精神障害が労災となるための基本的な考え方」を読めば、どうして精神障害が労災となるのか、評価する基準がどのようにしてできたのか理解できるようになります!
最後に、ご紹介した内容をおさらいしておきましょう。
- 精神障害の発病は、医学的にも裁判例でも「ストレス-脆弱性理論」に基づき説明されています
- 業務による心理的負荷(ストレス)が強い場合、精神障害も労災として補償されます
- 心理的負荷(ストレス)は、その人がどう感じたかという主観ではなく、客観的に評価されます
ご紹介した内容を理解すれば、どうして精神障害が労災となるのか、評価する基準がどのようにしてできたのか、わかるようになります!
「自分の精神障害が労災になるか知りたい!」、「会社に対して損害賠償請求したい!」という方は、別の記事の解説をチェックしてみてくださいね!
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