うつ病で休職中の生活費は?傷病手当金の受給方法と注意点を解説
- うつ病で休職中の場合、生活費はどうすれば良いの?
- うつ病が傷病手当金の対象となる条件は?退職後も傷病手当金をもらえるの?
- 傷病手当金と労災の関係について知りたい!
こんな悩みを解決できる記事を書きました。
精神疾患に関する労災請求や、会社に対する損害賠償請求を積極的に取り扱っています。
この記事で解説する「うつ病で休職中の生活費は?傷病手当金の受給方法と注意点を解説」を読めば、誰でもうつ病で休職中や退職後の生活費を確保する方法についてポイントがわかるようになります!
まずは、「結論として、うつ病で休職中の生活費はどうすれば良いの?」という疑問に回答しているので、ぜひ読んでみてくださいね。
うつ病で会社を休んだら給料はもらえる?
うつ病で会社を休んだら給料はもらえる?
うつ病は深刻な精神疾患ですから、休職せざるを得ない状況に陥ることがあります。
この場合、給与が支払われるかどうかは、会社によってルールが異なります。
会社の就業規則の定め方や休職理由によって異なる可能性があるため、まずは会社に詳細を確認する必要があります。
会社を休んだ場合の給与支払いルール
有給休暇の取得
多くの場合、最初は有給休暇を取得して休むことになります。有給休暇中は、通常どおり給与が支払われます。
ただし、有給休暇には一定の上限があり、長期の休職が必要な場合は有給休暇を使い切ってしまうことから、別の対応が必要になります。
無給の場合
有給休暇を超えて休職が必要な場合、多くの会社では、無給となる可能性が高いです。
会社は、休職中の労働者に対して、休職中も有給であると就業規則に定めたような例外的な場合(多くの会社では、そのような定めになっていません)を除き、原則として賃金を支給する必要はありません。
これを、ノーワーク・ノーペイの原則といいます。
そのため、会社は、休職中の労働者に賃金を支払わなくても違法ではありません。
このように、休職期間中は給与が支払われませんが、傷病手当金の受給要件を満たせば、収入を得られる場合があります。
うつ病の休職に必須!傷病手当金のもらい方と重要ポイント
傷病手当金とは
傷病手当金は、病気やケガのために働けない従業員に対して支給される現金給付です。全国健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合(組合健保)から支払われます。
そのため、協会けんぽや組合健保に加入していない、自営業者などの国民健康保険加入者は、傷病手当金の申請をすることはできません。
うつ病の場合の支給条件
うつ病の場合も、一定の要件を満たせば傷病手当金を受給できます。要件は、以下のとおりです。
- 療養のための労務不能であること
労務不能とは、それまで就いていた仕事に就くことができないことを指します。労務不能であるか否かは、医師の意見や労働者の業務内容などを考慮して判断されます。 - 4日以上仕事を休んでいること(連続する3日間の休業を含む)
病気やケガの療養のために連続して3日間仕事を休んだ後 (待期期間)、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。待期期間には有給休暇、土日祝日等の公休日を含みます。 - 給与の支払いがないこと
給与が全額支払われている場合は、傷病手当金は支給されません。ただし、給与の日額が傷病手当金の日額より少ないときは、その差額が支給されます。
全国協会健保HP:Q1:被保険者が、病気やケガで仕事を休んでいます。健康保険から給付がありますか?
待期期間は、「連続した3日間」である必要があります。「待機3日間」の考え方を、図示すると次のとおりになります。
これらを満たす場合は、うつ病による休職の場合でも、傷病手当金の申請を行うことができます。
なお、傷病手当金の要件には、「業務外の病気やケガで療養中であること」というものも含まれます。
しかし、発症したうつ病が労災(業務上)であるかどうかは、詳細な調査と労基署による長期間の審査が必要になるため、労災(業務上)か業務外かをすぐに判別することができません。
そのため、私たちは、傷病手当金の申請を先に行って、傷病手当金を先に受け取りながら、労災の請求も行うようにしています。
なぜなら、うつ病が労災であると認められれば、傷病手当金よりも高額な休業補償給付などの支給が受け取れるほか、会社に対する損害賠償請求もできる可能性が高まるからです。
うつ病における傷病手当金支給申請書の記入例
うつ病で休職した場合、健康保険から傷病手当金を受給することができます。しかし、申請書の記入は少し複雑で、間違えると支給を受けられない可能性があります。
ここでは、うつ病における傷病手当金支給申請書の記入例をご紹介します。「健康保険傷病手当金支給申請書の手引き」は、全国健康保険協会のHPからダウンロードすることができますので参考になります。
なお、ここでは全国健康保険協会の書式に基づき説明をしますが、会社で健保組合に加入されている方は加入する健保組合の書式を利用します。その場合でも、記載する内容に、ほとんど変わりはありません。
傷病手当金支給申請書は全部で4ページありますが、申請をする本人の記入が必要なのは1ページ目と2ページ目だけです。
3ページ目は会社に記入をお願いし、4ページ目は医師に記入をお願いします。
まず、1ページ目については、お手元に健康保険証(被保険者証)を用意して、記入例のとおりに記載しましょう。
1ページ目は、健康保険証(被保険者証)の番号や、申請者本人の生年月日、氏名、住所、振込先口座を記入するだけですので、特に難しいことはないでしょう。
重要なのは、2ページ目です。
申請内容「⑤-1 傷病の原因」欄について、仮に、うつ病を発症したのは業務によるストレスが原因であると考えている(労災請求をすることを考えている)としても、必ず、「1」(仕事中以外(業務外)での傷病)と記入してください。
「⑤-1 傷病の原因」欄に、「2」(仕事中(業務上)での傷病)と記入をしてしまうと、最悪の場合、労災請求を先に行うよう指示され、労災(業務上)か否かの結論が出るまで傷病手当金の支給がストップしてしまう可能性があります。
ケガによる労災の請求(休業補償給付など)の場合、労基署による審査も比較的短期間で済みます。
しかし、うつ病などの精神障害の場合、労基署の調査は6か月程度はかかります。その間に、給与を得ることもなく、また、傷病手当金を得ることもできない事態になってしまうと、何ら生活費を得ることができずに困ってしまいます。
また、「⑤-1 傷病の原因」欄に「1」(仕事中以外(業務外)での傷病)と記入して提出しても、後日、労災請求をすることができます。
そのため、この段階では、必ず「⑤-1 傷病の原因」欄に「1」(仕事中以外(業務外)での傷病)と記入するようにしましょう。
うつ病で休職する前の確認事項
うつ病で休職を検討する前に、以下の点を確認することが重要です。
- 会社の就業規則や労働契約書の内容を確認する
- 人事部門や上司に相談し、休職制度の内容や手続を確認する
- 医療機関で診断を受け、病状と休業の必要性を確認する
- 家族や周囲の協力を得られるかを確認する
事前に周到な準備をしておくことで、円滑な手続と適切な処置を受けやすくなります。早めに状況を把握し、対策を検討することが重要です。
特に、休職手続や休職期間については、会社や勤続年数によって定められている内容が異なります。
あなたがいつまで休職できるのか、会社に対して休職期間の確認をしておくことが必要です。
また、うつ病は回復に時間がかかる病気です。
経済的な心配を少しでも軽減するために、傷病手当金と休職制度を正しく理解し、できる限り早期に手続をすることが賢明でしょう。
退職の前後で制度が変わる?傷病手当金の切れ目ない対策
退職後も傷病手当金をもらうために必要な条件
うつ病で休職をして治療したとしても、休職期間満了や休職期間の途中で退職をする場合があります。そのような場合に、生活費が心配になるでしょう。
傷病手当金は、退職後であっても支給を受けることができます。ただし、次の条件をすべて満たすことが必要です。
- 退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あること(任意継続や国民健康保険の加入期間は除きます)
- 退職日の前日までに連続して3日以上出勤せず、退職日も出勤していないこと
なお、退職日の前日までに連続して3日以上出勤していない期間と退職日は、医師が労務不能と認めた期間であることが必要です。 - 失業給付を受けていないこと(併給不可。失業給付は働くことができる方に対する給付であるため)
- 退職日に傷病手当金を受給していた傷病で引き続き労務不能であること(断続しての受給はできません)
退職日より後の期間で、まったく関連のない傷病を申請しても、その傷病について傷病手当金は支給されません。
上記の①~④の要件をすべて満たす場合のみ、退職後も引き続き傷病手当金の支給を受けることができます。
受給できる期間は、退職しているかどうかにかかわらず、支給期間を通算して1年6か月です。
うつ病で休職中の収入は?傷病手当金の金額を解説
うつ病の症状が重く、休職を余儀なくされた場合、傷病手当金を受給することで一定の収入を得ることができます。
休職中、経済的な心配を少しでも軽減するために大切な制度といえるでしょう。
傷病手当金の1日あたりの支給額は、「傷病手当金の支給開始日の属する月以前の直近の協会けんぽの被保険者期間(任意継続の期間を含む)で継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30 分の1に相当する額の3分の2に相当する額」です。
これを計算式で表すと、次のようになります。
傷病手当金の1日あたり支給額を具体的に計算してみましょう。次のような例を考えてみます。
例:傷病手当金の支給開始日が令和3年2月15日、標準報酬月額が令和2年3月~8月まで16万円、令和2年9月~令和3年2月まで18万円
・直近1年間の標準報酬月額の平均額=(16万円×6+18万円×6)÷12=17万円
・直近1年間の標準報酬月額の平均額の30分の1=17万円÷30≒5,670円(10円未満四捨五入)
以上より、傷病手当金の1日あたり支給額は、5,670円×3分の2=3,780円(1円未満四捨五入)となります。
なお、休職中に会社から給与や手当が支払われている場合、傷病手当金の支給額から差し引かれます。
傷病手当金の支給額以上に給与や手当が支払われているときは、その間、傷病手当金は不支給となります。
うつ病で休職して退職するのはずるい?
うつ病は深刻な精神疾患であり、症状が重症化すると日常生活や就労が困難になります。
このような場合、療養のために休職をすることは決してずるいことではありません。むしろ、休職をして治療に専念することは、適切な対応と言えるでしょう。
そのため、うつ病患者が休職を選択するのは正当な権利であり、就業規則で定められた要件を満たせば、会社は休職を認める義務があるのです(会社が休職命令を出す場合もあります。)。
また、休職をした場合、収入が途絶えてしまう心配があります。
しかし、傷病手当金の申請や職場のストレスでうつ病を発症した場合の労災(休業補償給付)を利用することで、一定の収入を確保できます。
つまり、休職をしても路頭に迷うことはありません。
休職中も症状が改善せず、長期にわたって就労が困難な場合は、最終的に退職に至ることもあります。この決断は、あくまでも本人の健康を最優先に考えたものですから、尊重されるべき決断です。
むしろ、そのまま無理して就労を続けた場合、症状が悪化するリスクがあります。そのため、退職をして治療に専念することは、その後のあなたの人生を守るための選択でもあります。
したがって、うつ病で休職し、傷病手当金をもらった後に退職することは、決してずるいことではありません。
うつ病に関する正しい理解を持ち、あなたの健康を第一に考えることが何より大切です。
休職や退職は、決してずるいといった安易な判断ではなく、むしろあなたの将来を守るために必要な行動だと言えるでしょう。
うつ病による傷病手当金の審査期間は?
傷病手当金の受給には審査プロセスが伴います。申請書を提出すると、加入している健康保険組合や全国健康保険協会が審査を実施します。
書類に不備がなければ、概ね10日~3週間程度で支給が決定されます。
支給が認められた場合、申請時に記載した口座に傷病手当金が振り込まれるとともに、申請者の住所に通知書が送付されてきます。
一方、申請書に不備があると差し戻されてしまいます。その際は再提出が必要となり、手続きに1か月以上を要する場合もあります。
そのため、傷病手当金を申請する前に、全国健康保険協会が作成したチェックシートを活用して漏れがないかどうか確認をすることのが得策です。チェックシートは、こちらからダウンロードできます。
申請時の書類の準備と記入内容の正確性が、スムーズな支給へと繋がる重要なポイントです。万全の体制で申請に臨むことで、待ち時間の短縮と早期受給を実現できます。
傷病手当金と労災との関係
傷病手当金は、「業務外の病気やケガで療養中である」場合に支給されます。そのため、うつ病の発症が労災(業務上)による場合、本来であれば傷病手当金の支給を受けることができません。
その代わり、うつ病の発症が労災(業務上)による場合、労災から休業補償給付の支払を受けることができます。
そして、一般に、傷病手当金の金額(約67%)よりも労災による休業補償給付の金額(約80%)の方が大きくなります。
また、傷病手当金は最大でも1年6か月しか支給されないのに対し、うつ病による休業補償給付ではそのような期間の制限はありません。さらに、会社に対する損害賠償請求もできる可能性が高まります。
このように、あらゆる点で、傷病手当金よりも、労災認定を受けた方が労働者に有利になります。
しかし、発症したうつ病が労災(業務上)であるかどうかは、詳細な調査と労基署による長期間の審査が必要になるため、労災(業務上)か業務外かをすぐに判別することができません。
そのため、私たちは、傷病手当金の申請を先に行い、傷病手当金を受け取りながら、その後で労災の請求も行うようにしています。
「会社に対する損害賠償は、いくらくらいの金額が認められるの?」という方は、以下記事で詳しく解説していますので、確認してみてくださいね。
また、そもそも「どういう場合に、うつ病が労災と認められるの?」という方は、以下記事で詳しく解説していますので、併せて確認してみてくださいね。
休職する場合、傷病手当金と一緒に労災請求できるか検討しよう!
ご紹介した「うつ病で休職中の生活費は?傷病手当金の受給方法と注意点を解説」を読めば、傷病手当金のもらい方や退職後も傷病手当金をもらうために必要な条件がわかります!
また、うつ病で休職する場合、傷病手当金だけでなく、労災の可能性がないか忘れずにチェックすることが重要であることがわかります!
最後に、ご紹介した内容をおさらいしておきましょう。
- 傷病手当金の支給要件は、以下の3つです。
①療養のための労務不能であること
②4日以上仕事を休んでいること
③給与の支払いがないこと - 退職後も傷病手当金をもらうために必要な条件は、以下の4つです
①退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あること
②退職日の前日までに連続して3日以上出勤せず、退職日も出勤していないこと
③失業給付を受けていないこと
④退職日に傷病手当金を受給していた傷病で引き続き労務不能であること - 傷病手当金の支給総額は、「直近1年間の標準報酬月額の平均額の30分の1×3分の2×支給日数」という計算式に夜よって求めることができます。
- うつ病の発症が労災(業務上)であると認められた場合、あらゆる点で傷病手当金よりも労働者に有利になります。そのため、うつ病で休職する場合、労災の可能性がないか必ず確認しましょう。
ご紹介した内容を理解すれば、傷病手当金のもらい方や退職後も傷病手当金をもらうために必要な条件がわかります!
また、うつ病で休職する場合、傷病手当金だけでなく、労災の可能性がないか忘れずにチェックすることが重要であることがわかります!
「自分の精神障害が労災になるか知りたい!」、「会社に対して損害賠償請求したい!」という方は、別の記事の解説もチェックしてみてくださいね!
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