ご存知ですか?プロが教える「セクハラ」で労災認定される方法
- どうすれば「セクハラ」が原因で精神障害になったと認められるの?
- 「セクハラ」で労災認定される基準は?
- 労基署に「セクハラ」で労災と認定してもらうための具体的な方法が知りたい!
こんな悩みを解決できる記事を書きました。
精神障害に関する労災申請や、会社に対する損害賠償請求を積極的に取り扱っています。
この記事で解説する「ご存知ですか?プロが教える「セクハラ」で労災認定される方法」を読めば、どうすれば労基署に「セクハラ」が原因で精神障害を発病したと労災認定してもらえるのかがわかります!
専門的な話も多く、難しい部分もありますが、セクハラで労災と認定されるために必要なポイントを、世界一マニアックに解説しています!
まずは、「結論として、どうすれば労基署に「セクハラ」で労災の認定がされるの?」という疑問に回答しているので、ぜひ読んでみてくださいね。
【結論】こうすれば「セクハラ」で労災の認定がされます!
結論
結論として、「セクハラ」が労災と認められるためには、「対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷(ストレス)が認められること」という基準を満たす必要があります。
そして、「セクハラ」で「業務による強い心理的負荷」が認められるためには、厚生労働省が公表する「業務による心理的負荷評価表」の項目29に定められた、「セクシュアルハラスメントを受けた」における心理的負荷(ストレス)の総合評価が「強」となることが必要です。
つまり、あなたが「セクシュアルハラスメントを受けた」場合、心理的負荷(ストレス)の総合評価が「強」であると認められれば、労災(業務上)であると認められることになります。
これが、「セクハラ」で労災の認定がされるために必要なことについての、ほぼすべての答えになります。
これだけでは、専門家でも理解できません
ただ、これだけではとても専門的すぎて、どういうことだか理解するのは難しいですね。
そして、これだけで理解することができないのは、実は弁護士や社労士などの専門家であっても同じなのです。
だからこそ、セクハラと労災の関係について理解するのは、専門家であっても「難しい」とされているのです。
心理的負荷(ストレス)の総合評価が「強」とは一体どういうことなのか、労基署はどうやって労災かどうかを判断しているのかを、これからなるべく詳しく説明していきます。
セクハラによる精神障害について、実際に労基署が労災と認定した事例ついては、以下の記事で詳しく説明しています。実際の事例でどのように判断されたか知りたい!という方は、ぜひチェックしてください。
なお、うつ病などの精神障害の発病について、そもそも「労災」だと認めてもらうための認定基準をあまりよく知らない方にむけて、以下の記事で詳しく説明しています。
「心理的負荷(ストレス)ってどういうこと?」「心理的負荷(ストレス)の強さってどうやって判断されるの?」という方は、ぜひチェックしてみてください!
あわせて、そもそも「精神障害で労災が認められるためには、何が必要なの?」「労災が認定がされるための条件を知りたい!」という方は、以下の記事もぜひチェックしてみてください!
「セクハラ」で労災認定されるためには認定基準が重要!
セクハラの労災認定基準
セクハラを受けた場合、まずは厚生労働省が定めた「業務による心理的負荷表」に示された「具体的出来事」の中からセクハラに関係する項目を探します。
すると、「業務による心理的負荷表」の「具体的出来事」項目29で、「セクシュアルハラスメントを受けた」と書かれています。
そのため、ここに記載された内容が、セクハラで労災認定されるための基準となります。
具体的な基準は、以下の表で記載したとおりです。
出来事の類型 | 具体的出来事 | 心理的負荷の総合評価の視点 | 弱 | 中 | 強 |
⑦セクシュアルハラスメント | セクシュアルハラスメントを受けた | ・セクシュアルハラスメントの内容、程度等 ・その継続する状況 ・会社の対応の有無及び内容、改善の状況、職場の人間関係等 | 【「弱」になる例】 ・「○○ちゃん」等のセクシュアルハラスメントに当たる発言をされた ・職場内に水着姿の女性のポスター等を掲示された | ・胸や腰等への身体接触を含むセクシュアルハラスメントであっても、行為が継続しておらず、会社が適切かつ迅速に対応し発病前に解決した ・身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、発言が継続していない ・身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、複数回行われたものの、会社が適切かつ迅速に対応し発病前にそれが終了した | 【「中」である例】・胸や腰等への身体接触を含むセクシュアルハラスメントであって、継続して行われた ・胸や腰等への身体接触を含むセクシュアルハラスメントであって、行為は継続していないが、会社に相談しても適切な対応がなく、改善がなされなかった又は会社への相談等の後に職 場の人間関係が悪化した ・身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、発言の中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされた ・身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、性的な発言が継続してなされ、会社に相談しても又は会社がセクシュアルハラスメントがあると把握していても適 切な対応がなく、改善がなされなかった (注)強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントは、特別な出来事として評価 | 【「強」になる例】
項目が多くてわかりづらいですが、これからこの表の読み方を解説していきます。
心理的負荷(ストレス)の強さが「強」だけが対象
ここで、セクハラで労災が認められるためには、最初に「対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷(ストレス)が認められること」という基準を満たす必要があると説明したことを思い出してください。
そして、「業務による強い心理的負荷」が認められるためには、心理的負荷(ストレス)の総合評価が「強」となることが必要と解説しました。
そして、心理的負荷(ストレス)の総合評価が「強」となるのは、「業務による心理的負荷表」に示された「具体的出来事」の中で「心理的負荷(ストレス)の強度を『強』と判断する具体例」に記載されたような事実が認められる場合です。
言葉で説明するだけでは難しいので図で説明すると、以下の図のような関係になります。
セクハラで「強」とされる具体的内容
いよいよ、あなたがセクハラで労災が認められるかどうかの、具体的内容にせまってきました。
ズバリ、「心理的負荷(ストレス)の強度を『強』と判断する具体例」から抜粋した、以下の内容とあなたが同じ体験をしていた場合、労災認定の可能性は非常に高いです。
- 胸や腰等への身体接触を含むセクシュアルハラスメントであって、継続して行われた
- 胸や腰等への身体接触を含むセクシュアルハラスメントであって、行為は継続していないが、会社に相談しても適切な対応がなく、改善がなされなかった又は会社への相談等の後に職場の人間関係が悪化した
- 身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、発言の中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされた
- 身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、性的な発言が継続してなされ、会社に相談しても又は会社がセクシュアルハラスメントがあると把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった
(注)強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントは、特別な出来事として評価
上に書いた内容とあなたが同じ体験をしていた場合、労災認定の可能性は非常に高いです。もっとも、これらの具体例を見てもまだ、何を指しているのか読み解くのは難しいですよね。
具体例の数は、「•」をした4つです。
これから具体例を1つ1つ解説していきます。いよいよ難しくなってきますが、法律に詳しくない方にもなるべくわかりやすいように説明しますね。
身体接触を含むセクシュアルハラスメントが継続した
まず、セクハラで「心理的負荷(ストレス)の強度を『強』と判断する具体例」の1つ目は、「胸や腰等への身体接触を含むセクシュアルハラスメントであって、継続して行われた」です。
これらの基準は、法律の条文と同じように文言(もんごん)を分解して、ひとつひとつ確定しなければ正確に読み解くことはできません。
身体接触を含むもの
最初は、あなたが受けたセクハラが「身体接触を含む」ものであることが必要です。これは、「強」となる1つ目と2つ目の具体例全部で共通しています。
「胸や腰等」とありますが、これは例示です。そのため、身体的接触をされた部位が、胸と腰に限定されるわけではありません。
継続して行われた
次に、セクハラが「継続して行われた」ものである必要があります。
つまり、身体的接触を含むセクハラが繰り返されたものであることが必要です。
身体的接触を含むセクハラであっても、継続せず行われた場合、心理的負荷(ストレス)の総合評価は「中」と判断されます。そのため、このセクハラがあっただけでは、労災とは認められません。
身体接触を含むセクハラがあり、適切な対応や改善がない、または人間関係が悪化した
セクハラで「心理的負荷(ストレス)の強度を『強』と判断する具体例」の2つ目は、「胸や腰等への身体接触を含むセクシュアルハラスメントであって、行為は継続していないが、会社に相談しても適切な対応がなく、改善がなされなかった又は会社への相談等の後に職場の人間関係が悪化した」です。
セクハラがあった後の会社の態度や職場の環境が問題になる点が特徴です。
この2つ目の具体例は、身体的接触を含むセクハラが「継続して行われた」と認められなかったケースで適用することになります。なぜなら、身体的接触を含むセクハラが「継続して行われた」場合は、1つ目の具体例が適用されるからです。
まず最初に、継続しない身体的接触を含むセクハラが行われたことが前提です。
次に、あなたが受けたセクハラについて、会社に相談をしたことが必要になります。
そして、会社に相談をした結果、次の2つのどちらかの状態となることが必要です。
- 会社はセクハラに対し適切な対応がされず、改善がなされなかった
- 職場の人間関係が悪化した
これらすべての条件を満たした場合には、心理的負荷(ストレス)の強さが「強」と判断されます。その結果、労災と認定されることになります。
言葉で説明するだけでは難しいので図で説明すると、以下の図のような関係になります。
人格を否定するような性的な発言によるセクハラがあり、かつ、それが継続した
セクハラで「心理的負荷(ストレス)の強度を『強』と判断する具体例」の3つ目は、「身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、発言の中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされた」です。
まず、3つ目と4つ目の具体例では、身体的接触のない「性的な発言のみ」のセクハラが対象となります。
身体的接触を含むセクハラがあった場合は、1つ目と2つ目の具体例で検討されることになります。
そして、「性的な発言」によるセクハラの中でも「人格を否定するようなもの」に限定されていることに注意が必要です。
ここで、「人格を否定」するような発言とは、次のようなものを指します(発言に業務上の必要性がない場合)。
- 性別により差別しようとする意識等に基づくもの
▸「男のくせに根性がない」「女には仕事を任せられない」など
▸「おじさん(ジジイ)」「おばさん(ババア)」など - 持って生まれた身体的な特徴を否定すること
▸「太っている」「背が低い」「ぶさいく」など
そして、あなたが受けたセクハラが「人格を否定」するような「性的な発言」に該当したうえで、かつ、その「性的な発言」が「継続して」なされた場合に、心理的負荷(ストレス)の強さが「強」と判断されることになります。
なぜなら、1つ目と2つ目の具体例である身体的接触を含むセクハラと比べると、「性的な発言」によるセクハラの場合はストレスの強さが「弱い」ため、「性的な発言」の内容を「人格を否定」するようなものに限定したうえでさらに、それが「継続して」なされた場合に限って心理的負荷(ストレス)の強さが「強」となります。
このように、セクハラの内容が「性的な発言」による場合、労災と認定されるためには二段階で絞り込まれることに注意してください。
パワハラに対し会社が適切な対応をせず、改善しなかった
パワハラで「心理的負荷(ストレス)の強度を『強』と判断する具体例」の4つ目は、「心身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、性的な発言が継続してなされ、会社に相談しても又は会社がセクシュアルハラスメントがあると把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった」です。
4つ目の具体例は、セクハラがこれまで説明した1つ目から3つ目までの具体例に該当しない場合でも、労災として救済するものです。
まず、性的な発言のみのセクハラが継続してなされた後に、会社に相談するか、会社がセクハラを把握することが必要です。
そして、会社がセクハラに対して、「適切な対応をせず、改善をしなかった」場合には、心理的負荷(ストレス)の強さが「強」と判断されます。その結果、労災と認定されることになります。
言葉で説明するだけでは難しいので図で説明すると、以下の図のような関係になります。
「セクハラ」の判断に関する労基署の内部基準
これまで説明したように、セクハラの労災認定基準は非常に複雑で、難しいものです。
そのため、厚生労働省は、主に労災の審査を行う労基署に向けて「認定基準の解説」を行っています。
ここからは、この労基署の内部基準について解説していきます。
セクシュアルハラスメントとは
「セクシュアルハラスメント」とは、「セクハラ防止指針」(平成18年厚生労働省告示第615 号)により示されているものと、基本的に同じものを指します。
職場におけるセクシュアルハラスメントには、職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの(以下「対価型セクシュアルハラスメント」という。)と、当該性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの(以下「環境型セクシュアルハラスメント」という。)がある。
「セクハラ防止指針」(平成18年厚生労働省告示第615 号)
また、「性的な言動」について、次のように定義されています。
「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指し、この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等が、それぞれ含まれる。
「セクハラ防止指針」(平成18年厚生労働省告示第615 号)
総合評価の視点
セクハラによる心理的負荷(ストレス)の強さについては、「総合評価の視点」で記載された次の視点から総合評価を行います。
- セクシュアルハラスメントの内容、程度等、その継続する状況
- 会社の対応の有無及び内容
- 改善の状況
- 職場の人間関係
この中で、「会社の対応」等については、「セクハラ防止指針」で示されている「事業主が雇用管理上講ずべき措置」等について検討します。
具体的には、次のような事項を検討して、心理的負荷(ストレス)の強さを評価します。
- 会社の講じた対処等の具体的内容
- 実施時期等
- 職場の人間関係の変化
- その他出来事後の状況
なお、セクシュアルハラスメントのように出来事が繰り返されるものについては、繰り返される出来事を一体のものとして評価する必要があります。
そのため、発病の6か月よりも前にセクハラが開始されている場合でも、発病前6か月以内の期間にも継続しているときは、開始時からのすべての行為を評価の対象とします。
そして、セクハラの継続期間が6か月以内であるからといって、心理的負荷(ストレス)が弱いと評価されるものでありません。他方、単純にセクハラの継続期間が長いだけで、心理的負荷(ストレス)が強いと判断されるものでもありません。
例えば、発病前おおむね6か月には発言のみのセクシュアルハラスメントが行われたものの、約1年前には身体接触を含むセクシュアルハラスメントが行われていたような場合には、そのセクシュアルハラスメントは全体として身体接触を含むものとなり、その前提で心理的負荷(ストレス)の強さが判断されます。
そのため、発病前おおむね6か月の行為だけを評価の対象とする場合よりも、心理的負荷(ストレス)が強いと評価されることになります。
労基署による「セクハラ」の調査方法
セクハラの労災認定基準が複雑で難しいものであるのと同じように、労基署によるセクハラの調査も難しいです。
そのため、厚生労働省は、主に労災の審査を行う労基署に向けて「調査要領」にて調査の仕方を解説しています。
ここからは、この労基署によるセクハラの調査方法について解説していきます。
相談・請求段階での対応
セクシュアルハラスメント行為の詳細は、被害者が他人に知られたくない場合がほとんどです。
そのため、精神障害を発病した被害者であっても、労災請求やその相談をためらう場合があります。
しかし、そのような不安を解消していくよう、被害者の心情を十分に考慮して懇切・丁寧に対応し、相談段階において労災認定が困難として請求を断念させるようなことがないように注意します。
調査に当たっての留意事項
関係者からの聴取
セクシュアルハラスメント詳細は他人に知られたくない場合が大半であり、また被害者が被害の状況を思い出することによって、精神障害が悪化する場合があります。
そこで、可能な限り精神障害専門調査員を同席させたり、事案に応じて聴取時の留意事項をあらかじめ精神障害専門調査員に確認したりするなどの対応を行います。
また、労働基準監督署での調査のうち、特に、被害者やセクハラ行為者、事業主、同僚等の関係者からの聴取に当たっては、次のような事項に留意する必要があります。
<被害者、行為者等のプライバシー保護に関すること>
行為者、同僚等の関係者からの聴取を行う場合には、被害者及び行為者双方のプライバシーに特に配慮します。
<聴取の順序に関すること>
聴取の順序については、事実を的確に把握するため、原則として、最初に被害者から聴取を行い、その供述の内容を基本として、他の関係者から聴取を行います。
< 聴取時間、聴取側の人数、担当者の性別に関すること>
精神障害を発病した被害者に対する長時間に及ぶ聴取や、多人数で行う聴取が、被害者の症状の悪化を招く場合があります。
そのため、主治医の意見も参考にして、短時間の聴取や複数回に分割しての聴取を行うことや、聴取を行う職員が必要以上に多人数とならないようにすることについて配慮します。
また、被害者からの聴取は、できる限り同性の職員が実施又は同席するよう配慮し、異性の職員が聴取する場合には、事前に被害者に説明をします。
< 聴取の内容等に関すること>
聴取の内容や方法によっては、被害者が責めたてられているような心理状況に陥り、症状の悪化を招く場合があります。
そのため、必要な事項以外の聴取や、必要以上に詳細な内容の聴取を行わないよう、また、繰り返しの聴取にならないよう考慮します。なお、被害者の過去の性暴力被害や妊娠経験等は、労災認定の判断要素とはなりません。
当事者にしか事実関係が明らかでない場合の調査
セクシュアルハラスメント事案は、その事実関係を当事者だけが知る場合も少なくありません。
また、事実関係を客観的に示す証拠がない等の事情により、行為者や一部の関係者がセクシュアルハラスメントの事実を否認する場合も多くあります。
事実関係が客観的に明らかでなく、当事者の主張に大きな相違がある事案の事実関係の把握は非常に難しいものとなります。
このような場合、事実関係を客観的に示す証拠がないことを理由に事実を確認できなかったと評価するのではなく、次のような方法により当事者の話に信ぴょう性が認められるかどうかを踏まえて判断を行います。
- 被害者の供述のほか、当時の日記、メモ等を収集し、それらの資料に基づき関連する出来事を時系列に整理する
- 被害者の主張を否定する関係者の聴取では、必要に応じ、具体的な情報を示しつつ、整合しない点の釈明を求めながら聴取を行う
例えば、被害者の主張の方がより具体的で合理的である場合、セクハラを直接確認した者はいないものの以前から第三者に相談してその内容が一貫している場合、加害者の主張が合理性を欠くと考えられる場合があります。
このような場合には、一般的には、被害者の主張する事実があったと認定できます。
加害者の主張の方がより具体的で合理的である場合、被害者の主張が事実であれば通常はセクハラを直接確認した者がいると考えられるのにこれが存在しない場合等には、一般的には被害者の主張する事実はなかったと認定できます。
労災の判断は「労基署でも難しい」
労災認定の基準については、「業務による心理的負荷表」や、これまでの労基署の内部基準で詳しく説明してきました。
しかし、労災かどうかを実際に審査する立場の労基署にしてみれば、これまでの解説を理解したとしても、さらなる疑問点が出てきます。
そのため、厚生労働省は、主に労災の審査を行う労基署に向けて「質疑応答集」を作成し、Q&Aで解説をしています。
ここからは、厚生労働省が作成した「質疑応答集」の中から、セクハラに関連する事項について説明します。
- 特別な出来事の類型「心理的負荷が極度のもの」として挙げられている「強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントを受けた」について、出来事の項目29のセクハラと判別するため「本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為」の具体例を教えてください。また、着衣の上から触られてPTSDを発症した場合でも、「本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為」に含まれる場合がありますか。
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「本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為」とは、被害者が抵抗したにもかかわらず強制的にわいせつ行為がなされた場合や、被害者が抵抗しなかった(できなかった)場合であっても、行為者が優位的立場を利用するなどして、物理的・精神的な手段によって被害者の意思を抑圧してわいせつ行為が行われた場合を意味します。
着衣の上から行われたものであっても、これに該当する場合はあり得えます。
- 職場の上司、同僚が職場外(業務とは直接関係のない場面)で行った性的な言動は、どのような場合に業務による出来事(職場におけるセクシュアルハラスメント)と評価されるのでしょうか。業務による出来事と認められないケースがありますか。
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「職場におけるセクシュアルハラスメント」に該当するかどうかは、「セクハラ防止指針」に基づき判断します。
懇親会など職場以外の場所における行為であっても、直ちに業務以外の出来事とは判断できず、かえって、上司がその立場等を利用して行っている場合には、業務による出来事と評価すべき場合が多いと考えられます。
一方で、休日に業務と関係なく2人のみで出かけた場合などで、純粋に個人的な関係の下における行為と判断される場合には、業務による出来事とは認められません。
「セクハラ」で労災認定される方法を理解して手続を進めよう!
ご紹介した「ご存知ですか?プロが教える「セクハラ」で労災認定される方法」を読めば、どうすれば労基署に「セクハラ」で精神障害を発病したと労災認定してもらえるのかがわかります!
最後に、ご紹介した内容をおさらいしておきましょう。
労基署が「セクハラ」で労災と認定するポイントは、次のようなものです!
- セクハラが原因で精神障害を発病したとされるのは、心理的負荷(ストレス)の総合評価が「強」の場合です。
- セクハラの心理的負荷(ストレス)の強さは、厚生労働省が定めた「業務による心理的負荷表」の「セクシュアルハラスメントを受けた」(項目29)で評価します。
- セクハラで心理的負荷(ストレス)の総合評価が「強」とされるのは、次の4つです。
▸胸や腰等への身体接触を含むセクシュアルハラスメントであって、継続して行われた
▸胸や腰等への身体接触を含むセクシュアルハラスメントであって、行為は継続していないが、会社に相談しても適切な対応がなく、改善がなされなかった又は会社への相談等の後に職場の人間関係が悪化した
▸身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、発言の中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされた
▸身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、性的な発言が継続してなされ、会社に相談しても又は会社がセクシュアルハラスメントがあると把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった - セクハラが労災かどうかを判断することは、労基署でも難しいことです。そのため、厚生労働省は労基署に向けて、多くの解説資料を作っています。
- だから、普通の人はもちろん専門家であっても、セクハラの労災申請に関する知識や経験が十分になければ、セクハラが労災であるかかどうかを判断することは非常に難しいものとなります。
ご紹介した内容を理解すれば、どうすれば労基署に「セクハラ」で精神障害を発病したと労災認定してもらえるのかわかるようになります!
「自分の精神障害が労災になるか知りたい!」、「会社に対して損害賠償請求したい!」という方は、別の記事の解説もチェックしてみてくださいね!