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2週間以上にわたって連続勤務をした事例:労災が認められた理由とは?

この記事で解決できるお悩み
  • 2週間以上にわたって連続勤務をした場合、労災になるの?
  • 労災かどうかについて、労基署はどうやって調査しているの?
  • 実際の事例で、労基署がどのように判断したのかを知りたい!
弁護士・社労士 小瀬弘典

こんな悩みを解決できる記事を書きました。

精神障害に関する労災申請や、会社に対する損害賠償請求を積極的に取り扱っています。

この記事で解説する「【2週間以上にわたって連続勤務をした事例】労災が認められた理由とは?」を読めば、労基署がどのような事実を重視して労災であると認定した(認定しなった)のか、その理由がわかるようになります!

まずは、「結論として、2週間以上にわたって連続勤務をした場合、労災になるの?」という疑問に回答しているので、ぜひ読んでみてくださいね。

ただし、結論だけ覚えてもまったく役には立ちませんのでご注意ください!

具体的な事例の中で、労基署はどのようなポイントを重視して判断をしたのか、その判断するプロセス(過程)に注目して読んでくださいね。

厚生労働省が作成した「精神障害の労災認定実務要領」に掲載された事例をもとに一部改変して、解説していきます。

目次

結論とポイント!

認定結果

業務による強い心理的負荷(ストレス)が認められたため、労災(業務上)であると判断されました。

ポイント

この事案のポイントは、次の2点です。

  • Aは、新たな顧客からの受注により業務量が増大し、2週間以上にわたる連続勤務を行いました。
  • その後、月100時間程度の恒常的長時間労働を行いました。

「出来事」に対する心理的負荷(ストレス)の強さを判断したポイントや医学意見の聞き取りに関するポイントは、次のとおりです。

  • 「2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った」(項目13)は、連続勤務を行ったことに伴う精神的・肉体的疲労等による心理的負荷(ストレス)を評価する項目であり、恒常的長時間労働(1か月おおむね100時間の時間外労働)と組み合わせて総合評価をします。
  • この場合、恒常的長時間労働(1か月おおむね100時間の時間外労働)を評価する期間は、連続勤務を開始した日より前の期間と、連続勤務を終了した日より後の期間とします。

事案の概要

業務による心理的負荷(ストレス)について

まずは、登場人物について整理します。

  • 労働者(労災の請求をした人) Aさん
  • Aさんが働いている会社 X社
  • X社の社長 Bさん
  • X社の繫忙期以外も働いているパート Cさん、Dさん
Aの日常的な業務

・染物工として、革製品の染色業務を行う。
・染料の色調合から実際の染色、乾燥工程まで一貫して担当する。

2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った(項目13)

年月出来事
平成24年4月正社員がA一人しかおらず、パートが4、5人いましたが、みんな主婦で、2人以外は繁忙期(はんぼうき)だけ雇っていました。

お客様は何社かあり、20日納期のお客様と月末納期のお客様がありました。 20日納期のお客様は発注量が多いのが特徴で、月に100品以上の数量だったと思います。

月末納期のお客様はクオリティ重視で、月に30品程度納品していました。Aはこれらのほとんどすべてを担当していました。

1品仕上げるのに必要な時間は、色や大きさにもよりますが、1時間程度です。モノによって は1週間くらい作業時間を要するものもあります。

Aは通常1日10品程度、繁忙期には20品程度仕上げることもありました。繁忙期は9~12月で、4~6月も比較的忙しい状況でした。

平成24年4月から、社長の方針でパートを育てようということになり、Aが仕事を教えていましたが、その分Aの時間が割かれてしまい、A自身の仕事が進まない状況となりました。

Aは、平成24年4月9日から20日まで、13日連続勤務を行いました。
平成24年9月平成24年の8月から新しいお客様から受注が入り、例年よりも繁忙期への入りが早かったと思います。

通常は月に100品程度仕上げているのが、繁忙期は200品程度にまで増えますので、当然労働時間は長くなり、ほとんど終電で帰るような生活になります。

20日の納期が過ぎても、月末納期のお客様の品物を仕上げる必要があり、社長と一緒に作業するため、極端に月の後半の作業が楽になることはありませんでした。

心身の症状について

年月心身の症状
平成24年2月平成24年2月頃、社長に対する不満が 大きくなり、どうにか抑えようとしていましたが、どんどん強くなっていったので、3月で仕事を辞めようと考えていました。

自分の制御がきかなくなる前に辞めようとタイミングをみていましたが、忙しくて諦めることができませんでした。
平成24年9月平成24年9月18日、作業場でカバンの染色中に、ラジオの音が遠く聞こえ、何だかいつもと違うなと感じていたところ、めまいもし始めました。

そこで、椅子をつなげて横になって休もうとしたとたん、筋肉が萎縮(いしゅく)するように体全体がかたまり、しばらくしてから大きなけいれんも出てきました。

その後、心身の不調はメンタルからきているとして、専門医から解離性障害と診断されました。

主治医などの意見

労基署からの質問事項主治医の意見
貴院への初診日についてご回答ください。初診日: 平成24年10月2日
貴院に受診したきっかけ(来院経路等)及び初診時の主訴について、ご回答ください。受診の端緒及び主訴:東日本労災病院よりの紹介。
初診時における症状についてご回答ください。初診時における症状:「自分でないような感じ」 が数分持続する。「心の中に自分が2人いる」 感じがする。
疾患名とそのように判断された根拠について、ご回答ください。(できる限り、ICD-10の診療ガイドラインに基づきお書きください)疾患名及びその診断根拠:解離性障害(F44.0)
意識の変容~昏迷状態を呈する。 また症状とストレス因に関連を認める。
発病時期とそのように診断された根拠について、ご回答ください。(できる限り、発病時期は絞り込んでお書きください)発病時期及びその診断根拠::初診日以前の状況については不明
治療経過、投薬状況などの治療内容、現在の症状について、ご回答ください。治療経過::当院による精査のため外来通院をしていたが、10月20日外来受診時昏迷状態となる。10月20日~28日入院。

情緒的混乱も改善したため退院。退院後は外来通院中。

就業事項や労働時間の把握など

調査事項調査結果
所定労働時間9:00~18:00(所定労働時間 8時間)
出退勤の管理方法出勤簿により出退勤を管理していました。
労働時間の推計方法会社では出勤簿に押印し、残業を行った際は、時間数を備考欄に手書きで追記する方法で労働時間を管理していました。
スクロールできます
発病前1か月発病前2か月発病前3か月発病前4か月発病前5か月発病前6か月
労働時間の状況
起点:9月18日
101時間60.5時間51.5時間37時間61時間61時間

労基署の判断

具体的出来事

2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った(項目13)

Aは、平成24年4月から、 本来業務に加え、パート社員の育成業務に携わったことから、平成 24年4月9日から同年4月20日まで連続13日間の勤務が認められました。

なお、この連続勤務は深夜時間帯に及ぶものではなかったことから、具体例に照らして、心理的負荷(ストレス)の強度を「中」と判断しました。

恒常的長時間労働

その上で、恒常的長時間労働(1か月おおむね100時間の時間外労働)の状況を確認したところ、けいれん発作前6か月において、8月11日から9月10日までの30日間に115時間程度の時間外労働が認められました。

なお、恒常的長時間労働(1か月おおむね100時間の時間外労働)は、平成24年9月18日の勤務中に発作を起こしていることから、9月17日からさかのぼって計算し、項目13として評価した4月9日から4月20日までを除く期間を計算します。

そこで、 心理的負荷(ストレス)の総合評価を「強」に修正します。

業務以外の出来事

確認できませんでした。

個体側要因

確認できませんでした。

労基署の判断を徹底的に解説!

心理的負荷(ストレス)の強さに対する判断

2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った(項目13)

休日のない連続勤務を行った場合の心理的負荷(ストレス)の強さは、厚生労働省が定めた「業務による心理的負荷表」の項目13の「2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った」によって評価されます。

具体的に該当する項目を次のとおり抜粋します。

スクロールできます
出来事の類型具体的出来事心理的負荷の総合評価の視点
③仕事の量・質2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った・業務の困難性、能力・経験と業務内容のギャップ、職場の支援・協力の有無及び内容等
・業務の密度、業務内容、責任等及びそれらの変化の程度等
・連続勤務の継続期間、労働時間数、勤務間インターバルの状況等
【「弱」になる例】
・休日労働を行った
・休日出勤により連続勤務となったが、休日の労働時間が特に短いものであった
【「中」である例】
・平日の時間外労働だけではこなせない業務量がある、休日に対応しなければならない業務が生じた等の事情により、2週間以上にわたって連続勤務を行った

(1日当たりの労働時間が特に短い場合を除く)
【「強」になる例】
・1か月以上にわたって連続勤務を行った
・2週間以上にわたって連続勤務を行い、その間、連日、深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行った
(いずれも、1日当たりの労働時間が特に短い場合を除く)
業務による心理的負荷表」7ページ

「2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った」場合の「平均的な心理的負荷の強度」は「Ⅱ」であるとされています。

そのため、「2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った」場合、一般的な事例では、心理的負荷(ストレス)の強さは「中」となります。

この表の「中」の部分が薄いグリーンで塗られているのは、一般的な心理的負荷(ストレス)の強さは「中」になるという意味です。

この事例のあてはめ

この事例では、Aは、平成24年4月から、 本来業務に加え、パート社員の育成業務に携わったことから、「平成 24年4月9日から同年4月20日まで連続13日間の勤務」がされました。

このようなAの長時間労働は、心理的負荷(ストレス)の強さが「中」となる具体例の平日の時間外労働だけではこなせない業務量がある」、「2週間以上にわたって連続勤務を行った」に該当します。

なお、心理的負荷(ストレス)の強さが「強」となる具体例には、「2週間以上にわたって連続勤務を行い、その間、連日、深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行った。」とされています。

今回の事例では、「連続勤務は深夜時間帯に及ぶものではなかった」とされているため、心理的負荷(ストレス)の強さが「強」であるとは認められませんでした。

なお、「2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った」とは、14日の連続勤務ではなく12日の連続勤務のことを指します。

厚生労働省が作成した、旧「『認定基準』に関する質疑応答集」によると、次のように説明されています。

(問)
「2週間以上にわたって連続勤務を行った(注:旧項目17)」について、14日の連続勤務ではなく12日の連続勤務とされている理由は何か。

(答)
(週休2日を想定して) ある月曜日~次の週の金曜日まで連続して勤務した場合に、「2週間以上にわたって連続勤務を行った」と評価できると考えられるため、「12日」の連続勤務と表現したものである。

旧「認定基準」に関する質疑応答集

このように、Aには、心理的負荷(ストレス)の強さが「中」とされる例に該当する具体的出来事があったことから、心理的負荷(ストレス)の総合評価が「中」であると判断されました。

恒常的長時間労働(1か月おおむね100時間の時間外労働)がある場合の修正

日常的に長時間労働がある場合に発生した出来事の心理的負荷(ストレス)は、普通の場合よりも強いものとして評価される必要があります。

そのため、「具体的出来事の心理的負荷の強度が労働時間を加味せずに「中」程度と評価され、かつ、出来事の後に恒常的長時間労働が認められる場合」は、心理的負荷(ストレス)を「強」と判断することとされています。

今回の事案では、恒常的長時間労働(1か月おおむね100時間の時間外労働)について、けいれん発作前6か月において、8月11日から9月10日までの30日間に115時間程度の時間外労働が認められました。

そのため、「先」に、心理的負荷(ストレス)が「中」となる出来事があって、その「後」、1か月おおむね 100 時間の時間外労働(恒常的長時間労働)をした場合に該当します。

このように、Aには、心理的負荷(ストレス)が「中」となる出来事があって、その後、1か月おおむね 100 時間の時間外労働(恒常的長時間労働)があったことから、心理的負荷(ストレス)の評価を修正し、総合評価が「強」であると判断されました。

その他の判断

業務以外の出来事、個体側要因(本人の要因)は確認できなかったことから、そのまま労災(業務上)であると判断されました。

労基署の判断を理解して手続を進めよう!

ご紹介した「【2週間以上にわたって連続勤務をした事例】労災が認められた理由とは?」を読めば、労基署がどのような事実を重視して労災であると認定した(認定しなった)のか、その理由がわかるようになります!!

最後に、ご紹介した内容をおさらいしておきましょう。

今回の事例で労災が認められた理由をまとめると、次のようになります!

  • 連続勤務を行った場合、厚生労働省が定めた「業務による心理的負荷表」の項目13「2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った」に該当するかどうかを判断します。
  • 今回の事例では、「平成 24年4月9日から同年4月20日まで連続13日間の勤務」があり、「2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った」ことが認められました。
  • 「2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行った」とは、14日の連続勤務ではなく12日の連続勤務のことを指します。
  • 恒常的長時間労働(1か月おおむね100時間の時間外労働)がある場合、全体の総合評価を修正して判断します。

ご紹介した内容を理解すれば、あなたのケースにおいて、精神障害で労災が認められるために何が必要なのかわかるようになります!

「自分の精神障害が労災になるか知りたい!」、「会社に対して損害賠償請求したい!」という方は、別の記事の解説もチェックしてみてくださいね!

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この記事を書いた人

小瀬 弘典のアバター 小瀬 弘典 弁護士 ・社労士

弁護士・社会保険労務士の小瀬 弘典(オセ ヒロノリ)です。

2011年に弁護士登録してから、年間300件以上の法律相談と紛争解決業務に携わってきました。

他の弁護士と違うのは、社会保険労務士の資格を持ち、「うつ病」などの精神障害の労災・損害賠償請求について独自のスキルと経験を身につけている点です。

これまでに多くの結果を出してきた手法やノウハウを、惜しみなく提供していきます。

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