【決定版】パワハラでうつ病?労災申請事例から3つのコツを分析!
- パワハラが原因でうつ病になったと認められた、実際の事例を知りたい!
- パワハラによるメンタル不調は、どうして労災認定が難しいと言われるの?
- パワハラによるメンタル不調になった場合の労災申請のコツが知りたい!
こんな悩みを解決できる記事を書きました。
精神疾患に関する労災請求や、会社に対する損害賠償請求を積極的に取り扱っています。
この記事で解説する「【決定版】パワハラでうつ病?労災申請事例から3つのコツを分析!」を読めば、誰でも、パワハラでうつ病などの精神疾患となった場合に、労災が認められるためのコツがわかるようになります!
まずは、「パワハラが原因のうつ病は、どうして労災認定が難しいと言われるの?」という疑問に回答しているので、ぜひ読んでみてくださいね。
パワハラが原因でうつ病を発症したと労災認定されるのが難しい理由
パワハラでうつ病の労災認定が難しい理由
衝撃の結論から説明します。
実は、パワハラが原因でうつ病を発症したと労災認定されるのが難しい理由。
それは、みなさんが一般的に考えているパワハラの大多数は、労災の認定基準における「パワハラ」ではないからです。
実際にあなたが経験し、パワハラだと考えている出来事の多くが、労災の認定基準における「パワハラ」には該当しないため、パワハラが原因でうつ病の労災認定を受けることが難しいと言われている理由です。
一般的なパワハラと労災認定基準の「パワハラ」の違い
一般的に、上司から部下に対し、高圧的で威圧的な言動があれば、それはパワハラであると考える方が多いでしょう。
しかし、上司が部下に対して高圧的で威圧的な言動を行ったとしても、それが業務に関連して行われたものである場合、例え強い指導・叱責があったとしてもほとんどの事例で業務指導の範囲内と判断されているため、労災の認定基準における「パワハラ」には該当しないとされるからです。
そして、令和5年度の厚生労働省の統計によると、パワハラを原因とする労災認定率は54.3%で非常に高いものとなっています。
しかし、この高い労災認定率は、一般的にみなさんが考えているパワハラ(強い指導・叱責)のことではなく、労災認定の基準を満たしたパワハラがあった場合の認定率を指しています。
それでは、業務指導の範囲内だとしても、強い指導・叱責があった場合に労災の認定基準に該当しないのでしょうか?
この場合、パワハラではなく、業務による心理的負荷評価表の「上司とのトラブルがあった」(項目24)という項目で評価されます。
しかし、令和5年度の厚生労働省の統計によると、「上司とのトラブルがあった」を原因とする労災認定率は、わずか3.5%で非常に低いものとなっています。
このように、上司から業務指導の範囲内である強い指導・叱責を受けた場合、それがパワハラであると考えて労災申請をしても、労災基準における「パワハラ」として評価されず「上司とのトラブルがあった」として評価されてしまうため、労災認定されるのが難しいと言われているのです。
労災認定基準のパワハラと損害賠償責任におけるパワハラの違い
労災認定基準のパワハラと損害賠償責任におけるパワハラについて、きちんと整理して理解されている方は少ない印象です。
そこで、労災認定基準のパワハラと損害賠償責任におけるパワハラの関係について、わかりやすいようにイメージを図で示しました。
外側の大枠は、一般的に、あなたがパワハラと考えるもの(パワハラらしきもの)です。
パワハラかどうかは、事実ではなく評価の問題であるため、あなたがパワハラと考えるもののすべてが、法律上もパワハラとして評価されるわけではありません。
あなたがパワハラと考えるもの(パワハラらしきもの)のうち、業務上必要かつ相当なもの(業務指導など)については、法律上、違法性がないものです。
もちろん会社に対し相談し改善を求めることは自由ですが、法的に何かを求めることまではできません。
パワハラ防止法におけるパワハラは、職場におけるパワーハラスメントを防止するために講ずべき措置等の対象になるもので、あなたの個人的な損害賠償請求(慰謝料の請求)などとは違うものです。
損害賠償責任法上におけるパワハラは、パワハラ防止法におけるパワハラと多くの場合は同じものです。しかし、法律の目的が異なることから、厳密に同じものとは考えられていません。
労災認定の対象となる「パワハラ」は、心理的負荷(ストレス)の総合評価が「強」とされるものだけです。
仮にパワハラが認められたとしても、心理的負荷の総合評価が「中」や「弱」となる程度の出来事があっただけでは、労災とは認められません。
このように、労災認定の対象となる「パワハラ」は、パワハラ防止法や損害賠償責任法上におけるパワハラの中でも、程度がかなりひどいものだけが対象となります。
労災認定の対象となるパワハラを受けて、労災認定がされた方の中で、症状が完治・寛解して日常生活になんら問題なく復帰できる方もいれば、一定の範囲で日常生活に支障が残り後遺障害(14級~9級の程度があります)が認められる方もいます。
パワハラが原因でうつ病を発症したと認知される労災申請3つのコツ!
パワハラが原因でうつ病を発症したと労災認定されるのが難しいと言われていても、実際に、パワハラが原因でうつ病を発症したと認められている事例もあります。
そこで、私たちが独自に、パワハラ等を原因として労災と認められた事例・認められなかった事例を180件以上検討した結果、次のようなポイントがあることがわかりました。
- 精神的なパワハラの場合、行為が反復・継続するなど執拗(しつよう)に行われていない限り、心理的負荷の総合評価が「強」と認められることはほとんどない。
- 人格や人間性を否定するような言動がなければ、例え強い指導・𠮟責が行われたとしても、ほとんどの事例で「業務指導の範囲内」とされる。その場合、パワハラではなく、「上司とのトラブルがあった」として評価される。
- 強い叱責・怒鳴り方で「人格や人間性を否定」したものと認められることはあまりなく、明らかに業務とは無関係になされた実際の言動(例:「存在価値のない屑にしかすぎない」など)によって、客観的に審査されている(人格や人間性を否定されたと感じたかどうかは基準と無関係)。
このように、3つの重要なポイントがあります。
実際の事例で、心理的負荷の総合評価が「強」ではなく「中」や「弱」(「強」でなければ、これだけでは労災と認められません。)と判断された事例の多くは、これらのポイントをクリアしていなかったことが理由です。
このように、パワハラが原因でうつ病を発症したと労災認定されるコツは、「パワハラ」だけが精神障害の発症の原因として申請するのではなく、長時間労働や連続勤務など、業務による心理的負荷評価表の複数の出来事を組み合わせて申請することです。
なぜなら、パワハラだけでうつ病発症の労災が認められるためには、業務と関係しない、相当な回数・長期間にわたって、人格や人間性を否定されるような言動が継続したことが条件となります。
しかし、私たちが実際にパワハラ相談を受けていても、ほとんどのご相談は、業務指導の範囲内、反復継続していない、人間性や人格否定とまでは言えないと評価されるものが圧倒的に多く、これらの条件を満たすパワハラ相談は、10件のうち1件あるかどうかといった程度だからです。
①精神的攻撃が反復・継続しているか、②精神的攻撃が人格や人間性を否定するようなものか(客観的に審査される)、③業務指導の範囲内か、この3つのポイントをよく頭に入れてから、これから説明する労働保険審査会によって判断された実際の事例を検討してみましょう。
なお、2020年に労災認定基準が改正される前は、労災認定基準に「パワハラ」という記載はありませんでした。
そのため、以前は、「パワハラ」という基準ではなく、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」という基準で判断していました。
以下の事例の中で出てくる「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」という基準は、最新の労災認定基準における「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」とほぼ同じものを指しているものと考えてください。
心理的負荷の総合評価が「弱」とされた事例
経理業務に従事していた者が上司からのパワハラを受けた事例
労働者は、平成○年○月○日、Dからの言葉の攻撃によって、心身ともに限界に達し休職を余儀なくされたと主張。
Dは、「退社予定のEに対して、労働者がきつく言っていたので、最初は労働者にやめるよう目配せしていたが、それでも労働者はきつく言っていたので、あまりきつく言わなくてもいいですよと言ったところ、労働者は『きつく言っていません』と嫌な顔をしながら言い返してきた。その後は、特に口論するわけでもなく、労働者はいつもどおりに仕事を行い、帰宅した。また、Fのことについては、時期は忘れたが、仕事中に雑談でFの人の言葉はきつく聞こえるから、注意しようよと言ったことがある。」と申述した。
また、同僚のGは、当日の状況について、「労働者がEにきつい口調で話していると、Dが労働者に『Fの方言かもしれないけど、言い方がきついですよ』と言っていたが、そのやり取りは、そんなに長い時間ではなかったと思う。その後、労働者と昼食をとったが特別なことはなく、帰りもいつもと変わっていなかった。」と申述している。
業務遂行中において、労働者とDとの間で同僚のEのことに関してトラブルがあったと推認される。「上司とのトラブルがあった」に該当する。
<結論>
Dの発言は、労働者が同僚のEに厳しく言っていたことを諭したものと解され、業務指導の範囲を超えて厳しく叱責されたとは認められない。心理的負荷の総合評価は「弱」。
飲食店で清掃・調理等業務に従事していた者が上司からパワハラを受けた事例
労働者は、持ち場で作業中に生食のオーダーが入り、アルバイトがそれを行っていると、Fから「おまえこいつになんで生させてんねん。そっちより、こっちのメニュー先に通さんとあかんやろ」と強い口調で言われ、Fは「俺の言うことが聞けないんやったらここに居てもらわなくてもいい」と怒鳴られたと主張。
Fは料理長であり、オーダーの優先順位などに関して全体を見渡した上で、特別に指示を出すことも業務上当然のことであると考えられる。
言い方において、F本人も「優しくは言っていない」と述べているように、きつく感じられたところがあったことは十分推則できるが、Fの口調は誰に対してもそのような言い方であったと認められ、労働者に対してのみきつい言い方をしたとは認められない。
また、内容についても業務指導の範囲を逸脱しているとは認められない。
<結論>
「上司とのトラブルがあった」として、心理的負荷の総合評価は「弱」。
機械部品の発注等の業務に従事する者に社内の対人トラブルがあった事例
労働者は、H部長が、J担当課長と労働者を会議室に呼び込み、労働者に対して「お前はバカか。」と発言したと主張。
仮にこのような発言がH部長からあったとすると、「上司とのトラブルがあった」に該当するとみることができるが、H部長と労働者との間に対立関係が生ずるほどの叱責が行われたとは考えられず、せいぜい業務指導の範囲内の叱責であった。
<結論>
心理的負荷の強度は「弱」。
上司からのパワハラによってゴルフインストラクターが精神障害を発症した事例
労働者は、会社の上司から侮辱的発言を繰り返されたと主張。
労働者は、「他の社員がいる前で、G支配人に日常的に侮蔑的な発言を受けたことについてだが、私が覚えている発言は、『バカ』、『アホ』、『お前頭悪いからな』で、他にもいろいろ言われたが、毎回気にしているとこちらがもたないので、気にとめないようにしており、言葉は覚えていない。
また、このような発言は、私がパソコンで書類を作成しているときや、ミーティングの報告をしたとき、引き継ぎの報告時などに、言葉使いがおかしかったり、間違ったりしたときなどによく言われた。
G支配人は言葉の最後に必ずと言っていいほど『頭わりいなお前』と、口癖のように言っていた。G支配人は、気分によって言い方が違うが、顔を合わせると言われていたので、1日に10回以上は言われたと思う。
口調の強さは気分によって違うが、『強』、『中』、『弱』で言うと『中』程度で、売り上げが悪いとき等、G支配人がFに指導されて機嫌が悪いときには『強』程度の口調で、八つ当たりのように言われることが月に5、6回程度あった。」などと述べている。
しかし、会社関係者の申述によれば、G支配人の発言は、労働者が作成した書類の誤りに対する指導の中で述べられており、叱責するときも常識の範囲内の言動だったとしており、また、労働者の人格を否定するような侮辱的な言動があったという申述はみられない。労働者自身もG支配人の日頃の言動については、それ程強く受け止めている様子はうかがわれない。
<結論>
「上司とのトラブルがあった」として評価。労働者に対してされた発言はすべて業務指導の範囲内であったこと、周囲からも客観的に認識されるような対立が上司との間に生じたとまでは認められない。心理的負荷の総合評価は「弱」。
派遣社員としてCADによる設計等に従事していた者が上司からの叱責された事例
労働者が受けた叱責は、労働者の申述によれば、本件工事への派遣前の面接における労働者の懐中電灯の装備に関する質問に対して、J所長から「そんな暗いところで作業させてないだろう」と言われたこと。
また、熱中症での職場復帰時にJ所長から「熱中症だったら2、3日もすれば治るだろう!治らないのはガッツがないからだ!」と言われたことであり、客観的にはトラブルとはいえない程度のものである。
<結論>
心理的負荷の総合評価は「弱」。
医療機器の営業に従事する者が先輩からパワハラを受けた事例
Eは、「社会人としての研修を受けた後、配属先で先輩に同行し仕事を覚えていく。」と述べており、Fも、「社会人としての話し方やマナーといった研修はあるものの、仕事は現場で覚えていく形であった。」と述べており、専門知識に係る教育が十分に行われなかった可能性はあったと認めらる。
さらに、Gは電話聴取において、「○月○日の会食でFさんが『ほんまならお前みたいなやつは試用期間で首になっとるで』などの発言については、あったような気もするがはっきり覚えていない。」と述べており、Fはこれを否定するも、労働者に対する上司からの厳しい発言があった可能性も否定できない。
しかしながら、仮に労働者の主張をそのまま認めたとしても、その発言の内容は、ミスをした際に「首になっているところだ」、「お前といると俺の負担が増える」、「お前よりバイトを雇った方がましじゃ」といったものであり、会食の場であり、また労働者自身も認めているようにミスが多く発生していた事情を勘案すると、厳しい指導の域を超えるとは言い難い。
<結論>
「上司とのトラブルがあった」として判断。心理的負荷の総合評価は「弱」。
不動産管理業務及び経理業務に従事していた者が社長から叱責された事例
労働者側が、社長の業務指導を超えた叱責や退職勧奨があったと主張。
労働者は平成○年○月○日付け聴取書で、「平成○年○月からホームページの進捗状況についていろいろと言われるようになった。特に同年○月○日から同月○日までの4日間は強い叱責があった。○日と○日は『ホームページの仕事24時間やっても終わらない』、『鼻血が出るまでやっても終わらない』、『できないと労働者の仕事がなくなってしまうけどいいの』と言って直接やれとは言わないけど追い詰めるような言い方をされた。○日は『残業しないと終わらないよ』、『夜11時までやらなきゃ終わらない』と言われ、家でもっとやってこいと言われているように感じた。」と述べている。
労働者は、ホームページの完成予定日に近くなってからの社長の発言内容を叱責や退職勧奨と主張するが、労働者自身も完成時期を厳守しなければならないことは自覚しており、社長の発言も、時間的余裕が無くなってきて労働者の責任について問うたものであり、業務指導の範囲内であると認められ、退職勧奨にも当たらない。
労働者と社長の会話記録を確認するも、社長の発言において、威圧的な発言をしたり、人格を否定するような発言は認められない。「上司とのトラブルがあった」で評価。
<結論>
心理的負荷の総合評価は「弱」。
同僚から暴行を受けたことで精神障害を発症した事例
労働者は、同僚から胸ぐらをつかまれたなどと主張。
「平成27年2月5日、リネン室で、タオルやシーツ等の汚れ物の仕分け作業をしていた時、同僚が部屋に入ってきて、手袋を投げつけられ、胸ぐらをつかまれて負傷した。」と述べており、翌日から首の痛みを感じたとして、同月17日にG医療機関、同月18日にH医療機関を受診していたと認められる。
<結論>
「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」に該当するが、労働者の負傷は「頚椎捻挫」であるものの、療養を要するほどの症状であったとまでは認められない。心理的負荷の強度は「弱」であると判断。
心理的負荷の総合評価が「中」とされた事例
上司からのパワハラによる営業職が精神障害を発症した事例
平成25年労第160号
労働者は、上司から「本当にやる気はあるんですかー。早く採用させないとダメでしょう。」と言われるなどのパワハラを受けたと主張。
上司の部下に対する指導や叱責について、同僚は次のとおり述べた。「仕事上の指示をすると上司は厳しい言い方で、人によっては威圧的に感じたかもしれない。『これで売れるのか。』とダメ出しなどはしてくる。」
「人格を否定するようなことを露骨に言うことはないが、とにかく全否定というか、まずダメ出しから入る人だった。」
「一言で言うと、短気な人という感じで、『こんなことおかしいじゃないか。』と語尾が上がる言い方で金切り声を上げるという感じであった。」と述べている。
<結論>
その言い方には威圧的な雰囲気や強い語気表現があったとしても、その内容は業務のあり方に係る同氏の主張であり、業務指導の範囲を超えて労働者の人格や人間性を否定するようなものではない。
パワハラではなく、「上司とのトラブルがあった」の項目で判断する。心理的負荷の総合評価は「中」。
職場の嫌がらせ等が原因として巡回業務従事者が自殺した事例
労働者側は、上司Dが労働者に対し「殺すぞ。」などの言動を継続して行っていたと主張。
事務所関係者の聴取等から4度目のパトロールにおける2回目の巡回後に事務所内において、Eが被災者に対して「何もするなと言ったやろ、やったら殺すぞ。」との暴言が発せられたことが認められる。
他方、事業所内の職員に対するヒアリングの結果等からは、Dが労働者に対して継続的にいじめやパワーハラスメントを行っていたという事実は認められない。
Dの同僚等に対する業務指導は、教え方が厳しい面もあったと述べる事務所関係者の話もあることから、当該巡回時にDから労働者に対して厳しい指導があったことは推認できるが、上記の労働者に対する発言以外に業務指導の範囲を逸脱した言動は認められない。
<結論>
暴言を発したのは一回のみであり、継続的かつ執拗に行われたとはいえない。心理的負荷の総合評価は「中」。
切削加工を担当していた者が上司からのパワハラを受けた事例
労働者は、上司から「会社員失格」、「お前は必要ないから異動させられた」、「お前は変だ」との暴言を言われたと主張。
上司のDは「『会社員失格だ』『お前はいらない』などの言葉を言ったことはありません。」と述べている。
同僚のEは「労働者からF課長やDさんに怒られたという話は聞いたことはありますが、お前は必要ない等の言葉を言われたということは聞いたことはありません。」
同僚のGは「Dさんが労働者に『会社員失格だ』『お前は必要ない』などの言葉を言っているのを聞いたことはありません。」
労働組合議長のHは「他の職員から労働者が加工課でいじめられているという話を聞いたことはないです。労働者から不満や愚痴を聞いていますが、いじめられているというニュアンスではなかったと思います。労働組合で労働者の人事のことで会社に掛け合ったという記憶はないです。」とそれぞれ述べており、労働者が主張するような上司の言動があったことを客観的に示す証拠は認められない。
労働者は上司から仕事上の注意、指導等を受けていたことは認められ、これは「上司とのトラブルがあった」に該当する。
<結論>
上司からの注意、指導等は、同僚等の労働者の人格や人間性を否定するような言動があったとは認められず、業務指導の範囲内。心理的負荷の総合評価は「中」。
職場でのパワハラにより精神障害を発病した事例
同僚が労働者に対し発言したという内容は「言ったことは守れ」であり、また、同僚が労働者に関して上司に発言したという内容は「仕事をしていない、プロフェッショナルではない、チームプレイができない」である。
そうした発言があったことが仮に事実であったとしても、労働者の具体的な行動や仕事に対するものであり、人格や人間性を否定するような言動とは認められない。
また、同僚同士で労働者のことを「H」というニックネームで呼んでいたことについては、それが直ちに労働者に対する嫌がらせであるとは認められない。
<結論>
「同僚とのトラブルがあった」の「周囲からも客観的に認識されるような対立が同僚との間に生じた」に該当すると認められる。心理的負荷の総合評価は「中」。
契約社員が上司からパワハラを受けた事例
労働者は、前例のない名前を前置きしての左右確認体操、交通安全スポット放送(全館放送)の強要をパワハラであると主張する。
交通安全スポット放送において反省文を読み上げる行為には前例があった。
Dは「四輪の事故、人身事故、過失割合90:10というのは、とても重大な事故でしたので、この後の再発防止に力をいれないといけないと思いました。このような事故の内容なので、少しでも早く各職員に伝達するのが重要と考え、翌日スポット放送の指示を出しました。この理由については、労働者は『私だけ』と思っているかもしれませんが、それほど重大な事故だと思っています。」と述べており、労働者の本件事故が重大な人身事故になった可能性もあったことから、左右確認体操の先導役と反省文の読み上げという厳しい措置に至ったものであると認められる。
労働者にとっては屈辱的な行為をさせられたと感じて上司を恨めしく思う感情が芽生えた可能性は否めないが、当該措置は交通事故防止の注意喚起の一環として実施する業務指導の範囲内であると判断することが相当であり、パワハラ行為であったとまでは認められない。「上司とのトラブルがあった」に該当。
<結論>
あくまで交通安全活動の活発化を図るための上司による指示・指導の範囲内のものである。また、上司が労働者の人格や人間性を否定するような言動を行ったというものでもない。心理的負荷の強度は「中」。
事務員として勤務する者が上司からの嫌がらせを受けた事例
労働者は、Eマネージャーから、階段のすれ違いざまに「死ね」と言われたり、舌打ちされたことなどが大きな精神的な負荷となったなどと主張。
Eマネージャーについて職場関係者の申述をみると、「要注意と引き継ぎ事項になるくらいの人です。(中略)あの手、この手で人を追い込むようなところがあります。」(F)
「協調性がなく、わがまま、自己中心的で所長として営業所をまとめるに苦労するというものでしたが、実際に見てそのとおりだなと感じました。」(G)などとされている。
他方、労働者については、「仕事に対しては忠実で、非常に優秀だと思っていました。H営業所時代は、営業職員には信頼され、書類の不備などを指摘されれば、それに従っていたようです。」(G)とある。
こうした職場関係者からの申述等からみて、労働者は、平成○年○月頃Eマネージャーと書類の関係でトラブルとなったあと、Eマネージャーから労働者が上記に申し立てているような言動を受けた事実があったものと推測される。これは、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」に相当する。
また、労働者に対するEマネージャーの言動は、通常の業務範囲を超えている部分があったにもかかわらず、会社は、平成○年○月に労働者を別の営業所に異動させる以外、他に特段有効な方法を講じておらず、労働者に対する会社のサポート体制は十分であったとは言い難い。
一方で、職場の同僚等がEマネージャーと結託した事実はなく、また労働者に対するEマネージャーの当該言動は長期あるいは頻繁に行われたとも認められない。
<結論>
心理的負荷の総合評価は「中」。
自動車の販売営業者が自殺した事例
労働者には、上司にあたるE課長及びFから指導・叱責を受けた事実が認められる。
しかし、E課長の部下に対する指導について、職場関係者の申述によると、Gは「感情的に指導することはないので大きな負担になるようなことはないです。」
Hは「被災者が人前で注意指導されるのが嫌だということをE課長に言ったことをきっかけに、平成○年の中ごろから課内ミーティング内で各人に指導していたことを個別面談方式に切り替えて指導をするようにしたくらい、E課長の方が気をつかっていたぐらいです。」と申述をしている。
また、Fについても、Gは「いつも一括メールで送られ所属全員が同じメールを受けます。(中略)受け取った側で、自分が叱られていると受け止めるような者はいなかったと思います。」と申述している。
E課長及びFが被災者の人格を否定するような発言を行った事実は認められない。したがって、いじめや嫌がらせであるとは認められず、「上司とのトラブルがあった」として判断。
職場関係者の申述をみると、Iは「指導したときには反省するのですが、また、同じ失敗を繰り返すようなところがありました。」
Jは「仕事のミスでは、販売店さんなどとの約束が守れないとか、時間を守れないなどが多く、時には販売店の奥さんから私に連絡が入り一緒に謝りに行くようなことも5、6回ありました。大きなトラブルとしてはKさんのお客さんへの納車が遅れることや、同行の際に、約束の時間を破って販売店の社長より先にお客さんのところに行って先走って商談してしまうようなことがありました。」と申述している。
労働者は日頃からミスが多かったと推認されるところ、上司E課長は労働者に対し、日常的に業務指導をする必要があったと考えられる。
ただし、E課長は、上記Hの申述にあるとおり、労働者への業務指導が労働者にとって過度の負担にならないよう、一定の配慮を行っており、必ずしもE課長の業務指導が、労働者に強い心理的負荷を与えていたとまでは認められない。
一方において、Fは、「小型車担当者別日報」に、「○月決算月のAもBも無い担当者登録して海でも山でも捨てて来い!!」とのコメントを記しており、また、一括メールにおいても、「最終日に何をガタガタやってんだ!G以外ボーズや!実販無ければリース取って来い!」、「1課は何故登録がずれるんだ?拠点長を落とし入れるのか?いい加減な申告するな!当月受注ボーズ6人の4人ボーズじゃ計画できる訳無い!」などの厳しい言葉を用いて部下を叱責していた事実が認められ、実績の芳しくない労働者にとって、これらの叱責の言葉は、少なからず心理的負荷になっていた。
<結論>
労働者が上司から受けた業務指導の業務による心理的負荷の総合評価は「中」。
事務職員として勤務する者が先輩から嫌がらせを受けた事例
労働者は、先輩職員のCから仕事について怒ったような口調で指示されたり、業務指導とは思えない叱責を受け、また、労働者の後ろにあるロッカーの扉を閉めるとき椅子を蹴ってきた等の出来事があったと主張。
一方、Dは、Cから労働者に対する叱責について、「業務の指導範囲内での叱責はあったと思うが、これは必要なものであったと思う。事務所には訴訟を抱えたお客様が来られるので、事務所の対応でのミスは事務所の信用にも関わるため、ミスがあれば指導は必要なものであり、Cの労働者に対する言葉使いは、です、ます口調で乱暴な言葉は使っておらず、人格を否定するような発言はしていなかった。」と述べている。
また、Cは、「労働者に対して嫌がらせをしたつもりはない。労働者の電話対応や来客対応について、伝えていることが反映されていないので繰り返し説明せざるを得ない状況だったと思う。尋問的、威圧的な口調であったつもりはないが、返事が曖昧であったり、一度伝えたことができないので、結果的にそのように取られてしまうことになった可能性はある。また、椅子を蹴ったことについては、全く身に覚えがないが、もし、そういうことがあったのであれば、事務所は非常に狭いので後ろを通る際に椅子に足が当たることはあり得ることだと思う。」と述べている。
労働者の主張するCとの間の出来事は、「上司とのトラブルがあった」に該当。
Cの労働者に対する言動は一定程度強い口調であったと認められるものの、事業場の特性を踏まえた業務指導の範囲と理解するのが相当であり、また、椅子を蹴られたとする出来事自体も確認できない。
<結論>
労働者は、採用後10日程度で退職していることからして、上記トラブルの期間は短く執拗にあったとは認められないことから、その心理的負荷の総合評価は、「中」。
生命保険の営業に従事する者が上司から叱責を受けた事例
労働者側は、平成○年○月○日に、労働者が同僚Lをいじめていたという真実に反する話を持ち出され、支社幹部により執拗に非難されたと主張。
当日の議事録を見る限り、労働者による同僚Lに対するいじめの事実確認を行っているものと読み取れるが、労働者は、その場において、H支社長と同僚Lが一緒にいた場面について写真を撮り、メールで他の社員に送信したのではないかと執拗に詰問されたと主張しており、事実、その後労働者が業務命令であるとして書かされたとする同月○日付けの文書においても、同出来事の事実関係について記載している部分がある。
こうした事実からみて、同月○日における会議の場においては、同議事録に記載されている内容に留まらず、労働者が写真撮影を行い、メールで他の者に送信した疑いに対する厳しいやり取りがあったものと推認される。これは「上司とのトラブルがあった」に該当する。
労働者の行為に非があったとしても、労働者1人に対して、4人の上司が詰問するというやり方は一般的には適切とは言い難く、労働者には一定の心理的負荷がもたらされたであろうと推認される。
もっとも、当該追及の理由となった同僚Lへのいじめについては、労働者自身も同僚Lの前でこれを認める発言をしており、その程度や経緯はともかく、この種の行為が行われていたことについては疑いようがなく、さらに、H支社長と同僚Lが一緒にいたところを写真に撮り、少なくともNリーダー、Pリーダー、I部長の3人に見せたことも、それらの者に対する聞き取り調査報告書に示されている具体的な内容からみて、虚偽であったとは考えにくい。
<結論>
こうした行為が社内の秩序を乱す行為であると受け止められたとしてもやむを得ないところであり、事実確認のために一定の厳しいやり取りが行われたことも容認されざるを得ない。心理的負荷の総合評価は「中」。
総務経理等の業務をしていた者が上司から強い叱責を受けた事例
平成○年○月○日の労働者とF専務理事とのやりとりを含め、同年○月の一連の出来事の両者の発言内容を精査したところ、確かにF専務理事の発言には不適切で、威圧的なものがあったと認められる。
一方で労働者においても上司たるF専務理事に対して反抗的と受け取れる発言も認められる。
これら一連の出来事は、協会経費でのDの二重発注について、F専務理事が上司として誤った経理方法について部下に注意し、今後は二重発注しないように注意すれば済むことであったところ、部下である労働者が譲らず、自らの正当性と上司としての責任や発言の矛盾について固執したため両者の発言がエスカレートした出来事とみるのが相当である。
これら一連の出来事は「業務をめぐる方針等において、周囲から客観的に認識される対立が上司との間に生じた」に該当する。
<結論>
労働者のこの一連の出来事の後の1か月間(平成○年○月○日から同年○月末まで)をみると、本件疾病にかかる受診のための平成○年○月○日に16時19分での早退は認められるものの、他の勤務日は通常に出勤し時間外労働を含む勤務実績があることからしても、その後の業務に大きな支障があったとは認められない。心理的負荷の総合評価は「中」。
海外勤務をしていた者が社長からパワハラを受けた事例
労働者は、平成○年○月○日に社長から人格や人間性を否定されるような発言を受けた旨を主張。
社長による叱責が相当に厳しいものであったことは、社長自身も認めており、労働者の人格を否定するがごとき発言があった可能性は否定できないものである。
もっとも、当日の社長室での話について、Hは、1時間少々の時間であったとし、その場に立ち合ったIは15分くらい叱責されていたと述べており、少なくとも長時間に及ぶものではなかったものと判断できる。
また、叱責された理由についても、社長及び事業場関係者の申述によると、労働者が社用としては利用しないよう注意を受けていた高額な飲食店を再度利用したことに起因するものであると認められるところ、一定程度叱責されることもやむを得ない。
社長による叱責は、一部業務指導の範囲を逸脱した部分があった可能性があるも、会社組織の一員として、同𠮟責を受けるには相当程度の理由があったと認めざるを得ない。
また、その後労働者と社長が会う機会はほとんどなかったものであり、継続性は認められない。
<結論>
「嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」に該当するものであるとみても、心理的負荷の総合評価は「中」。
営業職として販売業務に従事していた者が上司からパワハラを受けた事例
平成○年○月○日、L主任は、労働者が顧客伝票をカウンターに再三放置することから、労働者に営業職はさせられない、外掃除、倉庫、ヘルパーの三つから選べと言った。
労働者が許してほしいと土下座するのをやめさせることなく、さらに選べと約1時間に及び迫り、労働者が席を立った数分後、逃げるように立ち去ろうとする労働者を追いかけ、さらに選択を迫ったことが認められる。
L主任が労働者に対し、土下座をやめさせることなく、約1時間に及び執拗に職種変更の選択を迫り、その後、逃げる労働者を追いかけてまで選択を迫ったことは、業務指導の範囲を逸脱しており、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ又は暴行を受けた」に該当する。
<結論>
人格や人間性を否定するような言動は確認されない。心理的負荷の総合評価は「中」。
自動車用バッテリー製造に従事していた者が上司から嫌がらせを受けた事例
H社員は、E班長は労働者に対し、トラブルがあった場合、「バカでしょ」とか「こんなのサルでもできる」などかなりひどい言い方をし、週一回くらいはあったと思うと申述している。「(ひどい)嫌がらせ、いじめ又は暴行を受けた」に該当する。
ただし、H社員は、同時に、「だからといって険悪な感じではなく、(中略)仲は悪くなかったと思う。」と申述しており、労働者からも特段の主張はない。
<結論>
E班長による人格や人間性を否定するような言動が執拗に行われたとは認められない。心理的負荷の総合評価は「中」。
非常勤職員として総務関係業務に従事していた者が上司からパワハラを受けた事例
労働者側は、上司からの叱責は、上司による一方的な決めつけによってなされたものであり、業務指導の範囲外であると主張する。
しかし、事業場関係者の申述をみると、Dは、「労働者は、E課長代理やF課長に繰り返し注意を受けていたのに、従っていませんでした。誰に対してもそのような感じはありました。(中略)F課長やE課長代理は当時、普通の仕事として指導をしている感じでした。いわゆるパワハラという感じは私には感じられませんでした。」と申述している。
Gも、「(E課長代理の指導は)一般的な指導です。担当として当たり前のことをするようにということです。怒鳴るようなこともなく、淡々と行っていました。」と述べており、上司が労働者に業務指導の範囲を逸脱するような言動を行ったとは認められない。
また、平成○年○月○日に9分間職場離脱をしたことを理由に訓告処分を受けた件について、Dは、「日頃から労働者は離席が多く、どこにいったのかわからなくなることがありました。何をしていたかはわかりません。」と申述しており、また、当該処分の内容・程度からからみても業務指導の範囲を逸脱したとまでは認められない。
したがって、労働者らの主張は採用できず、「上司とのトラブルがあった」に該当する。
また、トラブルは、具体的な内容、程度から考えて、労働者のその後の業務に大きな支障を与えるほどのものとは認められないものである一方で、上記訓戒処分は、職場離脱の際の状況や離席時間及び労働者が既に始末書を提出している事実などからみて、労働者に相応の心理的負荷を与えたものと推認する。
<結論>
心理的負荷の総合評価は「中」。
医療機関で薬剤師として勤務していた者に上司とのトラブルがあった事例
労働者は、①平成○年○月○日にE課長から、「横領している」、「職務怠慢である」と言われたこと、また、②同年同月○日に事業場のエレベーターにE課長が同乗してきた際、同課長に「何か言うことがあるでしょう。」と言ったところ同課長から「言うべき時がきたら言いまっさ。」と言われたことを主張。
労働者の主張する上記の①及び②の出来事は、①のE課長と労働者とのやり取りが発端となって、②の出来事が生じたと認められることから、一体の出来事として捉えることが妥当である。
組織上、E課長は労働者の上司ではないが、医薬品の購入について総務課も介在しており、また、労働者自身、同課長は総務課長として、服務上の問題について、指示を出せる立場、規則・慣例を改めることができる立場にあったと述べている。
「上司とのトラブルがあった」を類推適用することが妥当であると判断する。
①の○月○日における出来事については、事業場関係者の申述内容がおおむね一致していることから、労働者が主張するようにE課長から労働者に対して「横領」、「職務怠慢」の発言がなされたものと推認される。
同課長による「横領」等の発言は、労働者が提起した労働審判でも名誉毀損に当たるとの判断が示されているとおり、十分な証拠がない中で行われた不当なものであるといえる。
しかしながら、労働者及びE課長並びに事業場関係者の申述を基に当日の両者のやり取りを精査すると、E課長の発言に対して労働者も強くしっかりと反論しており、同課長による一方的な叱責もしくはいじめであったと評価することはできない。
また、②の同月○日のエレベーター内でのE課長と労働者とのやり取りは、労働者の申述の内容から一種の売り言葉に買い言葉ともいえる一瞬の出来事であり、労働者にとっては腹立たしいものであったと思料されるものの、当該やり取り自体を業務による心理的負荷を生じさせる出来事として捉えることは妥当ではない。
<結論>
①の○月○日の出来事について、具体的出来事「上司とのトラブルがあった」を類推適用して、両者が対立していることは事業場に広く知れ渡ったことと認められることから、「中」である例の「業務をめぐる方針等において、周囲からも客観的に認識されるような対立が上司との間に生じた」に該当。心理的負荷の総合評価は「中」。
製造部門で製造業務に従事する者に上司とのトラブル等があった事例
労働者は、平成○年○月の初め頃に同僚からごみ箱を投げ付けられたなどのいじめがあった旨主張。
労働者は、同月平成○年○月○日に同僚とごみ捨てに関して口論となった事実が認められ、「○年○月○日の状況聞き取り再調査」においても、当該事実は確認されている。
この口論については、同僚が空のごみ箱を投げ付けたという行為に端を発するものであり、両者間には周囲からも客観的に認識されるような感情的な対立が生じていたものと認めることができる。
もっとも、当日の出来事については、暴力行為等に及ぶものではなく、顕著な対立も一時的であったという事実からみて、「同僚とのトラブルがあった」として評価。
<結論>
心理的負荷の総合評価は「中」。
通訳、翻訳の業務に従事する者が上司からいじめ嫌がらせを受けた事例
労働者側は、E班長の発言のうち、特に、「ランドセル背負って小学生からやり直さないとだめだな。」、「この職場はクズばかりだしよー。」などの発言は侮辱・ひどい暴言に当たり、業務の適正な範囲を超えるものであって、パワーハラスメントに当たると評価すべきである旨主張する。
E班長の発言のうち、「ランドセル背負って小学生からやり直さないとだめだな。」、「この職場はクズばかりだしよー。」といった発言は、業務指導の範囲内とみることはできない。「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」で評価。
ただし、E班長から労働者に対する発言のうち、明らかに、労働者の人間性や人格を否定するような発言とみられるのは、上記発言の2度であり、執拗に行われたとまでは言い難い。
<結論>
心理的負荷の総合評価は「中」。
体重に基づきあだ名を読んでいた事例
労働者は、F支店長が赴任して3か月目くらいから同部長に目をつけられ、当時労働者の体重が○kg であったところ、以降、同部長から名前で呼ばれることなく、他の社員の前で「○号」と呼ばれていた旨主張している。
この点、F支店長は、聴取書において、「冗談で何回か言ったことがあるかもしれない」と述べているところ、G課長も、聴取書において、確かに、その当時、「○号」と呼ばれていたことがあったような気がする旨や、実際に、F支店長は職場に体重計を置いて太り気味の人の体重を確認していた旨述べている。
上記申述等を踏まえれば、少なくとも平成○年○月頃以降、F支店長が労働者に対して「○号」と呼称していたことは紛れもない事実であり、他の社員も認識していたものと推認される。
F支店長は、冗談で言ったことがある旨述べるも、職場に体重計を置いて太り気味の人の体重を確認するという行為をも併せ勘案すれば、同人の言動は、平成○年○月頃以降継続して行われていたものとみるのが相当であり、業務指導の範囲を著しく逸脱した行為と言わざるを得ない。
そうすると、当審査会としては、労働者が、他の社員の前でF支店長から「○号」と呼称され体重の確認もされ続けていたことは、認定基準別表1の具体的出来事「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」に該当する。
<結論>
その心理的負荷の総合評価は「中」であると判断する。
ペナルティとして複数回飲食代を奢らされていた事例
労働者は、F支店長からミスをするとペナルティーとして飲食代を複数回負担させられた旨主張している。
労働者は、平成○年○月○日、F支店長及びH課長と客先で 受注交渉を行った際、パンフレット等を持参し忘れたことでF支店長からペナルティーだと言われ、レストランでの飲食代を負担させられた旨述べ、同出来事を裏付ける資料として、同日付けのレストランのレシート(3名分の食事代計○円)を提出している。
また、労働者は、平成○年○月○日、F支店長と客先に赴くためコンビニエンスストアで待ち合わせた際、「俺を見たら、飲み物でも買うて来い」と言われ、労働者は言われたとおりに購入した旨も述べ、同日付けのレシート(お茶代○円)を提出している。
この点に関し、F支店長は、聴取書において、「食事代とお茶代を1回ずつ出させたことがあります。金額は食事代が○円、お茶代が○円くらいだったと思います。当時は遊びの感覚で出させました。このことで会社からは後に処分を受けました。」と述べている。
同人自らがこれを認めていることからすると、F支店長がペナルティーとして労働者に飲食代を負担させていたことは、疑うべくもない事実であると思料する。
当審査会としては、上記のような事実が認められ、また、上記レシートに基づく労働者の申述を踏まえると、同経緯に係るF支店長の申述に信憑性が疑われる部分があることから、複数回同様のことがあったとする労働者の主張を言下に否定することはできないものと判断する。
そうすると、F支店長の行為については、仮にそれが遊びの感覚であろうと、上司としてはあるまじき行為であることは会社から処分を受けていることからしても明らかであり、複数回行われていた可能性も否定できないことを併せ勘案すると、当審査会としては、同主張についても認定基準別表1の具体的出来事「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」に該当するとみるのが相当である。
<結論>
その心理的負荷の総合評価は「中」であると判断する。
心理的負荷の総合評価が「強」とされた事例
上司のパワハラが原因で施設技術担当者が自殺した事例
労働者のノート(以下「本件ノート」という。)には、平成○年○月○日朝、労働者の上司であるE部長、労働者及び課長の間で打合せ(以下「本件打合せ」という。)が行われ、労働者が、E部長から、「全てFの指示で行動する事、担当の業務をして一からやり直せ!!」、「机は担当者と横並び」、「全ての会議に出席必要なし」等の指示を受けるとともに、「Fの下で担当からやれ!!それがイヤなら今すぐに帰れ!!」、「今まで安易な道を選んで会社人生をやってきたのではないか?最も嫌いなタイプだ!!」等のコメントを受けたことが記載されている。
本件打合せにおけるE部長の発言内容を労働者から聞いたHは、「具体的な言葉自体は覚えていませんが、今までの会社生活を否定されたような内容だったと思います。」、「異動してきたばかりの人間になぜそこまで言うのかと思いました。特に仕事でミスをしたわけでもないと思いますし、異動してきてすぐになぜなのか、と思いました。」と述べていることから、E部長の発言は、労働者の会社人生を否定したものということができると判断する。
労働者が人事記録上は降格されていないにもかかわらず、本件席替えがあった事実については、Iは、労働者が「『机の配置が降格された』と言っていた」と述べ、Hが「ひな壇から島の中に入るのは、本人にとって辛いことだと思います」と述べていることから、E部長による見せしめ的ないじめと認められる。
また、Hは、同人から労働者と面談することを勧められたKが「面談をしようとGさんの内線電話にかけたところつながらないため、事務室に行くとGさんのあるべき席がなかったことを知ったようです。本部長もご存じなかったようで、そのままGさんを本部長室へ呼び話をしたようです。」と述べているが、本件席替えを初めて知ったKが、すぐに労働者と面談したことからは、Kも同出来事を異例のものと受け止めたことがうかがわれるものであり、D本部においても、同出来事が異例の取扱いであったことが推認されるものである。
労働者が心理的負荷を受けた状況は、本件打合せ後の平成○年○月後半から労働者がC本部に戻る同年○月末まで変わることはなかった。「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」に該当する。
労働者に対するE部長の言動は、上記の経緯から見て業務指導として合理性があるものと認めることはできず、労働者への反発を背景にしたものと考えざるを得ないものであり、業務指導の範囲を著しく逸脱し、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれており、本件席替え及び会議への出席の制限については2か月以上にわたり継続していたことが認められる。
<結論>
心理的負荷の総合評価は「強」。
社内システム業務担当者が上司や同僚から嫌がらせを受けた事例
労働者は、Fから、平成○年○月頃から平成○年○月までの期間において、「厚顔無恥(太字)」、「所詮お前は糞以下だし存在価値のない屑にしかすぎないよ。皆が何と言っているかわかる?可哀想に…(中略)糞以下の哀れな生物(イキモノ)は!!」、「お願いですから、臭い(太字)だけでもどうにかして下さい。」、「あわれというか 平気で嘘をつくし、自己保身のために必死(中略)おまえいくつなんだ?イキモノとして醜い。醜すぎる。」、「家もわかるし、お母さんに会うことにしました。どんな家庭環境で育てたらこんなクソになるか?いろいろ話したいと思います。」等人格や人間性を否定するようなメールが1年以上にわたり執拗に送りつけられていた。
この点、労働者は、Fから上記メールを受けた理由は、同人が派遣社員の女性と話してばかりいる等、あまり仕事をしない様子であったことから、次第に距離を置くようになったためであると述べている。
また、G課長は、Fは、労働者に対して当初いろいろ世話をし、可愛がっていたのにもかかわらず、労働者が次第に離れていったことから、上記のようなメールを送信したことを認めたことは事実であって、その後、Fは、会社の懲戒審査会において譴責処分を受けたと述べている。
上記の各申述によれば、労働者がFから上記メールを送られることになった理由は、労働者がFと距離を置いたことによるものと推認される。その他、労働者の責に帰すべき特段の理由は何ら見いだせない。
そうすると、労働者がFから上記メールを送信され続けたという出来事は、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」に該当する
<結論>
Fから労働者に対して送信されたメールの内容は、労働者の人格や人間性を強く否定するものであることは明らかであり、また、労働者がこのようなメールを受けるにつき、労働者自身に何らの非も認められず、さらにメールの受信期間も1年以上もの長期間に及んでいた。心理的負荷の総合評価は「強」であると判断する。
工場内の設備の修理及び整備業務に従事していた者が自殺した事例
労働者は、平成○年○月○日から同月○日にかけて、多数の非常停止ボタンの交換作業をしたが、同月○日、F課作業員が機械(被覆ホッパードライヤー)を稼働させるため立ち上げようとしたところ、非常停止がリセットできない状態となって、機械が稼働しなくなり、同日午前○時頃から7時間停止するというトラブルが発生した。
その後、当該トラブルは労働者が交換した当該機械の配線が誤っていたため基盤が壊れたことが原因であることが判明し、労働者は同ミスの原因と反省をまとめた報告書(以下「本件報告書」という。)の作成を命じられた。
本件報告書は、G課長やH主任ら上司の了解の下に、G課長の以下のコメントが書き込まれた後、I課○名の課員全員に回覧された。本件報告書には、G課長のコメントとして、「200千円誰が払う?」、「本当に設備屋?」、「目悪かったっけ?」、「殺人犯になったかもしれないね」、「自分のコメントが書き込まれた本件報告書をパウチにして台車に取り付けて、忘れないように」といった内容が記されている。
本件報告書について、G課長は、非常停止ボタンは人命を守るボタンで絶対に失敗してはならないものであるため、強めのコメントを自筆で書き込んだと述べている。
さらに、同出来事について、H主任は、労働者がした配線工事ミスで基盤が壊れ機械が動かなくなったことは大きなケガにつながるものではなかったが、現場作業員の安全を守っているということを再認識させるため、「仕事をなめてるのか。」と労働者を厳しく叱責したと述べている。
もっとも、E職長は、労働者の配線工事ミスで引き起こされたようなトラブルは結構あることで、翌日には部品が届いてすぐに交換したので、生産には影響がなく、致命的なミスではなかったものであり、G課長のコメントは、きついことが書いてあり侮辱のようにも感じたし、H主任の叱責は、ミスの程度からするとなぜ怒ったのか分からなかったと述べている。
また、労働者の同僚Jは、稼働が停止した機械は、人が挟まれるような構造ではなく、労働者の配線工事ミスは、大事故につながるミスではないし、古い機械では7時間ぐらい止まることは、平均して月に1回くらいはあると述べた。
さらに、Kも、機械の非常停止ボタンが解除されないという不具合に対して、G課長とH主任が特にきつく怒ったが、みんなで労働者をたたく必要はないと思ったし、G課長の本件報告書へのコメントの書き込みは差別発言と感じたと述べており、その他の同僚職員も、労働者に対する上司の言動等は行き過ぎたものと感じる旨を述べている。
労働者の配線工事ミスにより、機械を立ち上げた際に非常停止ボタンが解除されず、機械の稼働が長時間停止するというトラブルが発生したことは事実であり、同出来事は、事業場にとって留意を要する事件であったと推認される。
しかし、稼働を停止した機械は人が挟まれるような構造ではなかったため、人身事故につながる可能性は少なかったこと、長時間にわたって機械の稼働が停止するというトラブルも一定の頻度で発生していること、さらには、上司や同僚も被災者の配線工事ミスは生産に特段の影響があるような致命的なミスではないと認識していることなどに照らせば、労働者のミスが重大な結果をもたらすようなものであったとまではいうことができない。
G課長のコメントやH主任の労働者に対する叱責等は、労働者のミスの内容や程度に鑑みると、業務指導の範囲を逸脱しており、同コメントの表現も部下に対する指導としては適切さに欠けるものであり、さらに、同コメントが書き込まれた本件報告書はI課内の全課員に回覧されているという事実も勘案すると、労働者にとって大きな心理的負荷になったことは間違いない。
また、H主任は、労働者の配線工事ミスは大きなケガにつながらないものであったと認識していたにもかかわらず、そのミスが発覚した翌日である平成○年○月○日にも、再発を防止するための対策を検討するように指示するとともに、改めて労働者のミスの存在を指摘する内容のメールをI課員○名宛てに送信している。
さらに、その後、労働者は、再発防止会議においてもE職長を始め同僚らから相当強く責められ、責任を追求されたものと推認される。このような執ような責任追及は、被災者に対する業務指導の範囲を逸脱しており、もはや嫌がらせであると判断する。
<結論>
「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」に該当するものであり、その心理的負荷の総合評価は「強」。
経理業務に従事していた者が精神障害を発病した事例
労働者は、H指導員から1日おきに怒鳴られたと主張し、わからないことを聞くと「聞かなくてもわかるだろう。」と怒鳴られ、聞かずに仕事を進めるとH指導員が「お前はなんで(仕事を)聞いてこないんだ!」と怒鳴られたこと、その怒鳴り声は周囲に響きわたるものであったこと、前任のIも同様に怒鳴られていたと主張する。
同僚のJは、「平成27年10月から、H指導員の声が大きくなっていた。労働者に対しては一切の弁明をするような機会を与えないような言い方をしていた。その説教は、もう勘弁してあげたらいいのにと思うくらい長いものであった。」旨申述している。
会社関係者への聞き取り調査でも、H指導員の労働者に対する上記のような対応は「業務上の指導に付随し、優位性を背景に行われたものであり、その「大声」、「きつい言い方」の度合いは、横で聞いていた無関係の第三者ですら恐怖を覚えるようなものであり、これにより労働者が受ける恐怖感は相当なものであったと考えられる。」とする評価となっている。
そうすると、H指導員による労働者に対する対応はもはや「業務指導の範囲内」にあると認めることはできず、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」に当たる。
また、H指導員による労働者への指導には、「お前ふざけんじゃねえぞ。」「なんでお前はそうなんだ。」「基本がわかるのか。」等の人格や人間性を否定する言動が含まれ、繰り返し行われている。
上司であるK副長から指導を受けた後も労働者に対して「しばしば大声を上げていた。」とK副長が申述していることから、執拗であると認められる。
<結論>
心理的負荷の総合評価は「強」。
上司のひどい嫌がらせ等により精神障害を発病した事例
労働者は、平成28年7月中旬以降、労働者にとって派遣先の事実上の上司に当たるEから、毎日のように些細なことに関して叱責され、その言動の中には労働者の人格を否定する言動や派遣労働者である労働者を侮辱する言動が含まれていたと主張。
① 平成28年7月に出張先のホテルに機材を送る際に、送り状の書き方に関し、Eから「なんで勝手に書いたのか。それではホテルに盗まれる。」と罵倒され、対処の仕方を聞いても教えてくれなかったと労働者は述べており、基本的にそのとおりであったとEも認めている。
② 平成28年12月のH所在の工場に出張した際、労働者はEの上司に当たるGからの「労働者はまだ経験が浅いから後ろで話を聞いていればよい。」という指示に従ってEの後ろに立って朝礼に参加していたところ、「(略)仕事なんだから自分から仕事をもらいに行け。」とEから、侮蔑する表現を用いて叱責されたと申述しているところ、「文字通り言ったかどうかは分かりませんが、そのニュアンスに近いことは言った。」ことをEも認めている。
③ 平成29年1月16日には、客からの要求があった作業手順書の修正を労働者がGの許可を得て行ったことにつき、Gは、労働者の行動には問題がなかったにもかかわらず、Eは自分に相談・報告がなかったとして、労働者を「勝手にやるな。なんで俺を通さないんだ。(略)お前は仕事を受けられる立場じゃない。俺に許可を取らずに仕事を受けやがって。改ざんじゃねーか。不正じゃねーか。」等の言葉を用いて、自分の怒りに任せて感情的になり、語気強く怒号のような声で怒鳴りつけたと申述する。
また、その怒り方が常軌を逸しており、人格否定をしていると捉えられてもおかしくない状況であったので、Gは、「ちょっと待てお前、さすがにそれは言い過ぎじゃないか。そうじゃないだろう。」とEを注意して、当該行為を止めさせたと申述している。
Gは、「Eは機嫌次第で声を荒げることがある。かんしゃくを起こすことがあり、ファイルを机に叩きつける等の荒い行動に出る特性がある。」ことを認めており、また、Eの言動は「『叱る』というより『怒る』という傾向があるので注意していた。一度言ってやらなくなるようなものではなく、根気よく何度も何度も注意していく必要があるという認識であった。」と申述していることからすると、Eは、日頃から厳しく感情的な言動を繰り返していたと推認し得る。
また、同僚のIも、Eから「幼稚園じゃないんだからモジモジしていても何も始まらないぞ。」と言われたことがあると申述し、Eについて、「業務指導とはいえ、『幼稚過ぎるね』等の棘がある言い方をしますし、頻繁に労働者を厳しく叱責していましたので、労働者は大丈夫かなと思ったことがありました。」と申述している。
労働者が、平成28年8月頃、「パワーハラスメントと考えられる発言、対応をする者がおり、機嫌次第で声を荒げるため周囲が萎縮している。そのような環境で仕事をするのは大変苦痛であり、次の仕事ではその者(E)と一緒になるので身の危険を感じる。」として、会社企業倫理社内相談窓口に相談した結果、秋口くらいからEとは離れて仕事をしていたものの、Eは、その後再び出張等で労働者と一緒に仕事をすることとなった際に、労働者に対してその人格を否定する又は労働者を侮辱する発言を含む言動を繰り返していたと認められる。
なお、上記相談があったことを受け、Gは、Eに対して、コミュニケーションの仕方等に関し、「相手を萎縮させるような、恫喝めいた言い方は止めなさい。」といった指導を行っている。
労働者は、Eから、業務に関する事柄についてではあるものの、頻繁に労働者の人格を否定する又は労働者を侮辱する発言を含む言動により、厳しく叱責をされていたものと認められる。
一方、労働者には業務に関する知識や経験に乏しいところがあったため、先輩格で経験も豊富なEとしては、労働者の仕事ぶりに対して、いらだちや不満を募らせる状況にあったと推認し得るものであり、この点ではEの言動が厳しくなったことは理解し得る点もある。
しかしながら、Eの労働者に対する言動は、労働者に対して十分な研修が必要であったのにこれが行われなかったことも踏まえると、上記のとおり、労働者が問題にしているEの言動が業務に関連してのものであることを勘案しても、その内容と態様は業務指導の範囲を逸脱しており、その中には人格を否定するような言動が含まれ、かつ、これが執拗に行われたものというべき。
<結論>
「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」に当てはめて評価。心理的負荷の総合評価の程度は「強」。
パワハラが原因でうつ病を発症した場合、コツを理解して労災請求しよう!
ご紹介した「パワハラが原因でうつ病を発症?実際の裁決事例を徹底分析!」を読めば、誰でも、パワハラでうつ病などの精神疾患となった場合に、労災が認められるためのコツがわかるようになります!
最後に、ご紹介した内容をおさらいしておきましょう。
労災が認められるためのポイントをまとめると、次のようになります!
- 精神的なパワハラの場合、行為が反復・継続するなど執拗(しつよう)に行われていない限り、心理的負荷の総合評価が「強」と認められることはほとんどない。
- 精神的パワハラの場合、人格や人間性を否定するような言動がなければ、例え強い指導・𠮟責が行われたとしても、ほとんどの事例でパワハラではなく「業務指導の範囲内」であるとされている。
- 言い方や怒鳴り方などで「人格や人間性を否定」したと認められることはあまりなく、業務とは無関係になされる実際の発言内容(例:「存在価値のない屑にしかすぎない」など)が重視されている。
「自分の精神障害が労災になるか知りたい!」、「会社に対して損害賠償請求したい!」という方は、別の記事の解説もチェックしてみてくださいね!
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